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 スエイさんの近況、スエイさんが今考えていること、これからの時代を生き抜く術などを聞く不定期インタビューを行っていました。これはスエイさんの2006年の大腸ガン発見から、「死」について、「あらゆることの『意味』がなくなる」これからの時代を生きていく術について2009年に話を伺ったものです。

聞き手松田義人 取材2009年1月


●スエイさんが2006年の秋にガンになった前後から、日記類の更新が減ったような気がするんですけど。
スエイ ブログに書けるような日常じゃないから。平々凡々と楽しく暮らしてます。 ガンの前後はイベントなんかも多かったから、ブログも書いてたけどね。新宿「ロフト」で「ガンからの復活ライブ」をやったり(笑)。なんかね、ガンになったときは、それ自体がイベントのような感じだったんだよ。僕は、子供の頃に大病したことがあるけど、それ以降は風邪引いて薬をもらう程度でさ、入院なんかしたことがなかったの。それでたまたま検査したら、突然「ガン」と言われたわけだからさ、なんかハイテンションになるんだよね。うちの奥さんなんかテンション上がっちゃって、「みんな心配するから入院は内緒にしておこうね」って自分で言ってたくせに、次の日から「スエイがガンになりました」って、いろんな人に電話かけまくって(笑)。
●普通、落ち込むんじゃないですか。
スエイ そりゃ末期だったら落ち込むかもしれないけど、僕の場合は「切れば治る」って言われたから。平凡な日常にさ、そういうちょっとした事件があると、テンションが上がるんですよ。ガンじゃなくても、例えば「家が火事になる」とか「奥さんが家から出て行く」とか。
●じゃあ、ガンになったからと言って、スエイさんの考えが一転するようなことは特になかったんですか?
スエイ 自分の考えていることが、ガンを契機にガラッと変わるもんじゃないでしょ(笑)。ただね、僕の場合は大腸ガンの初期でさ、腫瘍を内視鏡で取るっていう方法もあったんだよ。その方が手術しないぶん体に負担がかからないんだけど、ガンが残る可能性もあるって、そういう話を医者から聞いているとき、隣にいた奥さんが「切ってください」と言うもんで手術することになったわけ。人の体だと思って(笑)。だから手術台に乗ったときに、「内視鏡でやったほうが良かったんじゃないかな」とか「ひょっとしたら、このまま死んでしまうかもしれない」とかチラッと思ったよ。だから、死に対して少しだけ免疫ができたかもしれないね。
●昔、スエイさんが「気合があれば、病気にはならない」と書いていたのを読んだことがあるんですけど。
スエイ 風俗に行くとき、気合いがあれば性病にかからないとか(笑)。確かに、若い頃はそう思ってたんだけど、やっぱりなるときはなるんだよね(笑)。病気っていうのはひとつの警告だとは思うわけ。だから、病気は悪いことって思わないほうがいいんですよ。僕もガン以降、生活パターンが若干変わったもんね。あんまり夜遅くまで酒を飲んだりしないようになったとか。それまでは、ピスケン(曽根賢氏)なんかと朝まで飲んだりしてたからね。僕は、酒があんまり強くないんだけど、あるときを過ぎるといくらでも飲めるんですよ。そして必ず吐く。でも、それはやっぱり体に良くないし、そういうことがあまり楽しくなくなったよね。気持ち悪くなるだけだし。



2007年11月20日に新宿LOFTで行われた
イベント「YES!末井 (ガンから)復活ナイト!!」


●スエイさんは、もともと「死」ということに対して意識しながら暮らしていましたか?
スエイ いや、あんまり考えてなかったね。だから、ガンになったことで、「死」に対して少しは考えるようにはなったかな?  いつも考えているわけじゃないけど、今まで考えていたようなことに、多少「死」ということも加わってきている。年のせいかもしれないけど、「死」ということがそれほど大きい問題じゃなくなってるんだよね。
●スエイさんの身の周りでも結構亡くなっていますよね。
スエイ つい先日、木村恒久さんが死んじゃったし。去年は、奥さんのお父さんも死んじゃったし、その前はナベゾ(渡辺和博さん)も死んだし……ねぇ。
●自分の考えの中に「人間はいずれ死ぬ」ということがあったほうが良いんですか?
スエイ 「死」ということを意識すると「生」が輝く、なんてことを言う人もいますけど、その人次第だからさ、どっちでもいいんじゃないの。「いずれ死ぬ」ということで楽しく暮らせるのならいいだろうし、かと言って「死」ということばかりに支配されて暗くなるんだったら良くないでしょ。たださ、「落ち込むから、考えるのをヤメよう」と言っても1回思ったら考えちゃうから、そこは難しいとは思うけど。例えば、今の世の中で暮らしていると、「お金」のことはみんな考えちゃうじゃない、どうしたって。一度、それを考え出すと、頭を占領しちゃうからね。あれは精神的に良くない。お金は、人間を支配しますよね。あれがイヤなんですよね。



●それを具体的に言うと?
スエイ 聖書では、物質の長(おさ)を「悪魔」って言ってるんだけど、「お金」は物質の最たる物だからね。お金って全ての物質に置き換えられるじゃん。「何か欲しい」と思えば、お金があれば、なんだって買えるし。だから一番支配されやすいんだよね。部屋ボロボロでも服がダサくても、お金を持ってさえいれば平気だと思うよ。だって、お金があればそんなもの、買いたいときに買えるわけだから。でもね、「お金」持ってると「悪魔」に支配されるのも事実なんだよね。いま世界的に金融崩壊になっていて、そういう本がいっぱい出ているけど、金融業界にいた人たちはムチャクチャしてますよ。人を騙すことなんか平気なんだから。「悪魔」に支配されているのが、わかりやすい形で出ていますよ。
●ただ、「お金がないと、お金にとらわれない自由な生活が出来ない」ともスエイさんは言っていますよね。
スエイ 特に都会で暮らしてるとね、お金がないと自由な暮らしが出来ない。住むところもないとなると、大変だもんね。僕だってホームレスになる可能性がないとは言い切れないけど、まぁなったらなったときに考えようって感じですよ。ホームレス生活をどうやったら楽しく送れるかって。お金も意味がなくなればいいんだけどね。いま、あらゆることの「意味」がない時代になっているでしょ。
●「意味」がない?
スエイ 善悪の概念が崩壊してますよね。戦争だと人殺しが善になるし、金融業界だと人を騙してもお金を儲けることが善になるしね。男であることの意味、女であることの意味なんかも、もうどうでも良くなってるし。最近やたらと、男か女かわからない人がテレビに出てますよね。「まじめの崩壊」って本が出てるんだけど、日本人が世界に誇れる性質の「真面目」ってことも崩壊してるらしいんだよね。「真面目って良いことだ」って思ってて、真面目な人と会ってると、安心するじゃないですか。でも、その真面目っていうことに何の意味があるのか、と言われると、だいたいそういう真面目な人が損をしているから。そうなると、「真面目が良い」という概念自体が、どんどん崩れてきて、それに意味がなくなっていくんですよ。あとは、「有名になるのはいいことだ」とかね。お笑い芸人でもバンドでも、みんなどこかで「有名になりたい」っていう意識を持ってると思うんだけど、それだって意味がなくなるかもしれないし。「有名になったって、みんなからバカにされるだけだ」とか。「みんなの笑い者になることが、有名人」っていうことになると、有名になる意味がなくなる(笑)。そういう風にだんだん「意味」が崩壊していくみたいな気がしてるんだよね。歴史がなくなって、意味もなくなって、この先一体どうなるのか、みたいな感じですよ。まぁ、それはそれで面白いんだけどね(笑)。
●全てに「意味」がなくなったら、みんな無感情になるんでしょうか。
スエイ 感情は残ると思うけど、意味で人をつなぐことは難しくなるでしょう。ただ、お笑いは結構流行ると思うんですよ。お笑いってあんまり意味がないじゃないですか。とにかくなんかおかしいとかさ。ある種のカタルシスみたいになって、笑ってるときは気持ち良くなるっていう。あとは、ドラッグとかね。ドラッグは、全く意味がなくて、ただ気持ちいいだけだから。





●経済も意味も崩壊となると、ムチャクチャになりそうですね。
スエイ 未来はないですよね。だけどさ、そのない未来のことを、ウジウジ考えていてもしょうがないからね。唯一幸せというか楽しく暮らすためには、身の周りの人とは、仲良くすればいいんじゃないですか。まず、結婚しているんだったら夫婦間を大事にしたほうがいいよね。普通の男の人って会社に行って、残業したり、主体が会社にあってさ、家庭をあんまり顧みていない。「俺は孤独なんだ。お前も孤独でいろ」みたいな感じ(笑)。「世の中は冷たいんだ」とか言って威張ったりして(笑)。そんなことをやっていると、すさんだ気持ちになるしさ、なんかこうギスギスしてくるんだよね。でも、会社なんかに主体があったって、会社がツブれたら誰も助けてくれませんよ。それに、これからはツブれる会社はもっと増えるだろうし。だから、それよりも夫婦を基本に考えたほうがいいでしょうね。まぁ、結婚していなければ恋人とか友達でもホモでもレズでもいいんだけど。それを基本に暮らすようにしないと、いざとなったときに行き場所がなくなっちゃうと思うんだよ。
●スエイさんは、「夫婦関係が、思いやりの訓練」って常々言っておられますが。
スエイ うん、割とそういうところがあるよね。家庭でいつも喧嘩ばっかりしていたら、周りに対してもなかなか優しくなれないよ。逆にそこがウマくいっていると、周りにもいい影響を与えられる気がする。「神様は人間が一人で生きていけるほど人間を強くは作っていない」ってどっかに書いてあったけど、確かにその通りだと思うね。だから、自分の周りの人と仲良くしないと。聖書にも「汝の隣人を愛せよ」って書いてあるし。やっぱりさ、核のようなものを持っておいたほうがいいと思うんだよ。一番信じられる物を持っておかないと、これからは特に大変。僕は、つい最近まで会社を3ヶ月休んでたんだけど、そういう意味では良かったですよ。核となる家庭生活だけで過ごせたからね。





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