スエイ式編集術
ここではスエイさんによる、売れる雑誌を作るための様々なコツを紹介します。スエイさんに「どうしたら売れる雑誌を作れるか」を聞きたい方は、この意見を参考にしてください。
編集術1
雑誌の表紙は大事ですよね。まず、一番最初に人目につくとこだから。雑誌のすべては表紙で決まりますよね。
表紙で、読者の好き嫌いが出るとマズいんですよ。書店で目立つことはいいことだけど、万人に好かれるような表紙じゃないといけない。よくさ、誰かが描いたイラストを表紙にする場合もあるんだけど、イラストだとさ、「このイラストが好き」「イヤだ」っていう人が出やすいと思うんだよね。だから、できるだけそういうことがないほうがいい。全ての人が受け入れられる表紙が一番良いんじゃないかな。
男性誌の表紙なんかだと、女性の顔が多いんだけど、人の顔っていうのは情報量多いからね。顔を見るとさ、色んなものを感じるじゃない? 「この人は綺麗だ」とか、「ブスだ」とか、「優しそうだ」とか、「ちょっとこの人、性格が悪そうだ」とかね。
でも、それがたとえば手の写真だったら、情報が少ないわけ。せいぜい「手が綺麗だな」くらいで、「優しそうだ」「性格が悪そうだ」っていう情報はないでしょう。そういう意味で一番情報量が多いのが顔だから、雑誌の表紙には割と顔を使う場合が多いんです。
僕が『写真時代』っていう雑誌を始めたとき……まぁ、これはエロ本なんだけど、エロ本じゃないフリをしようと思って、表紙にアイドルの顔写真を使うようにしてたんだよね。当時のエロ本の表紙といえば、いかにもって感じのセクシー女性のセミヌード写真だったから、それがアイドルなら本屋さんもエロ本とは思わないと思って。
エロ本ということになってしまうと、本屋さんの隅のエロ本コーナーに置かれてしまうわけ。『写真時代』が欲しいと思っても、エロ本コーナーに置かれていたら、気の弱い人はそこまで行けないでしょう。
ところが芸能人とか有名人が表紙に出てるとさ、本屋さんは「これは人目に付くところに置いてもいいんだな」ということで、通常のエロ本コーナーよりは、前のほうの棚に置いてもらえるじゃないですか。本屋さんはいちいち中味なんか見てないんだから。
だから、最初はタレント事務所に企画書だけを見せて、表紙撮影の交渉をしてね。企画書にはエロ本だとはいっさい書いてないから、すぐOKしてくれるんだよね。で、『写真時代』の創刊号は、そのころ人気のあった三原順子の写真になったんです。
撮影は田宮史郎さんに頼んだんだけど、田宮さんはヤル気になってタングステンライトなんか使ったもんだから、なんだかものすごい情感たっぷりの写真になってしまったんです。いまにも自殺しそうな表情の三原順子。つまり、「作品」にしちゃったんですね。これは表紙写真としては邪道なわけ。表紙写真の撮り方は、正面から大光量のストロボをパカッとたいて撮るんです。そうすると影が出ないから。表紙写真に影や情感は禁物なんです。万人に笑顔を振りまく影のない写真でないといけないわけ。
『写真時代』はそれでも内容が良かったから、創刊号は完売だったんだけど、あとから「なんていう雑誌だ。こんなひどい雑誌に載せるな」って三原順子のファンクラブから怒られちゃったりして。その時点で次の表紙写真を撮っていたから、2号目までは有名アイドルを使えたけど、3号目からは『写真時代』と言うと断られましたね。だんだんB級アイドルとかC級アイドルとかになっちゃってね(笑)。
『パチンコ必勝ガイド』の場合は、パチンコ台が表紙なんだけど、あれも顔なんですよ。パチンコを打つ人はまず、あの盤面を見るわけでしょう。パチンコにとっては盤面が顔だから、そういうことで盤面を大きく使い、内容豊富な景気良い感じを文字をいっぱい入れることで出したりして。
色の感じも大切で、表紙に黄色とか紫の色が多いと、雑誌は売れないんですよ。何故なら、黄色とか紫色って、みんなが好きな色じゃないからね。紫色なんていうのは、オカマとか特殊な人しか好きじゃないでしょう(笑)。黄色はカラスも嫌うらしいし。この前テレビでやってたんだけど、カラスがゴミ袋を食い破って困るということで、ゴミ袋を黄色と黒のストライブにしたら、カラスが来なくなったって。なんかスズメ蜂を連想するらしいんだね。寒色も「寒い感じ」を与えるからあまり使わない。必然的に赤とかピンクが多くなっちゃう。
文字は雑誌によるよね。パチンコ雑誌みたいにゴチャゴチャしたほうがいい場合もあれば、スッキリしたほうがいい場合もある。センスを売りモノにしてる雑誌はあんまりゴチャゴチャしてるとマズいんじゃないの? 『SWITCH』とか『エスクワイヤ』とかね(笑)。
最近の表紙でびっくりしたのはやっぱり『クウネル』だね。マガジンハウスのスローライフ系の雑誌。あれは過激ですよ。表紙は、ただその辺にあるような椅子とテーブルが写ってるだけでさ、普通そんなもん表紙にしないですよ(笑)。「椅子とテーブルがある」だけじゃ普通、誰も見ないでしょう。だから、僕は逆にそれが凄いと思ったけど。
まぁ、雑誌の表紙を考える上で一番手っ取り早いのは、本屋さんに行って雑誌をよく見ることだろうね。「ここに自分が作る雑誌を置いたらどうなるか」っていうことをよく考えたほうがいい。雑誌の表紙は相対だから、本屋さんで色んな雑誌が並んでる中で目立って、なおかつみんなから嫌われないものはナンなのか、というようなことを考えたほうがいいでしょうね。
余談だけど、表紙って作った編集者の性格が出るみたいなところもあるよね。だいたいわかる。保守的な人が作ると当たり前の表紙になるんじゃないかな。「こういうことを表紙でやると、ちょっと、売れないんじゃないか」とか。「あまりにも他の雑誌と違うから、いけないんじゃないか」とかね。そういう縛りみたいなものを自分の中に入れてしまうとさ、まあ、似たり寄ったりの雑誌になっちゃうと思う。
編集術2
雑誌はタイトルですね。
と言っても、その雑誌によって、どんなタイトルにすればいいかは違うんだけど。まずね、雑誌のタイトルは、「濁音を入れたほうがいい」と言われてますよね。『BRIO』『ガテン』『ダダ』『パチンコ必勝ガイド』とかね。「ダ」とか「ガ」とかが入っているほうが、言葉として強いでしょう。特にカタカナのタイトルをつけるときは、濁音が入ってたほうがいいんじゃないかな。今気付いたけど、僕がやってた『ウィークエンドスーパー』には濁音がないね(笑)。だから、3年しか持たなかったのかな(笑)。
『ウィークエンドスーパー』は一応は映画雑誌ということで、ゴダールの「ウィークエンド」から取ったんです。僕が観た映画で一番印象が強かったのが「ウィークエンド」だから。でも登録されてたんです。だから「スーパー」付けて『ウィークエンドスーパー』にしたわけ。映画のことはあんまり出てこない雑誌だったけど。
まぁ、濁音をつけるっていうのは、みんなが言ってる話だけど、『写真時代』のときはね、タイトルが決まったときに「これでもう大丈夫」と思ったの。大丈夫っていうか、自分の中で、その雑誌で何をやればいいかが見えてきたわけです。最初はね、『写真時代』っていうタイトルには結構反対があったんですよ。「漢字四文字のタイトルはダメだ」とか「時代」と付く雑誌は売れないとかね。
「時代」と付いているのは、『蛍雪時代』とか、『野生時代』とかがあったんだけど、ちょっと堅いから売れないんじゃないかみたいな意見が多かったのね。でも、その堅いところに意味があったんです。
『写真時代』で僕は「エロの既成概念をブッ壊せ」とか「写真の既成概念をブッ壊せ」とか「みんなを驚かせてやろう」とか考えていたから、それは当然過激な内容になると思っていたから、タイトルは平凡なほうがいいんです。それに、売る要素はエロだと決めていたから。でも、エロ雑誌に思われたら困るわけ。エロ雑誌のコーナーに入っちゃうと売れないから。だから、エロっぽいタイトルだとマズいわけです。『写真時代』なら、本屋の人も「写真の雑誌なんだな」と思って写真雑誌やカメラ雑誌のコーナーに置いてくれるという目算があった。中身なんかいちいち見ないですから。
『写真時代』は、なんと言っても荒木経惟さんだけど、最初はね、荒木さんから「『ダゲール』ってタイトルどう?」って言われたの、ちょっと恥ずかしそうに(笑)。荒木さんは写真の歴史をよく知ってるからさ、だから、「ダゲール」とか「ニエプス」なんていう名前が出てきたと思うんだけど、結局僕が出した『写真時代』っていう案を荒木さんと相談して、それで決まったの。
その『写真時代』が売れて、7年半続いたんだけど、発禁になっちゃってね。そのときはもうエロをやる雑誌は作りたくなかった。もう全部『写真時代』でやっちゃったから。それに、カルチャーっぽいこともやりたくなかった。カルチャーをいかにも「カルチャー雑誌です」って具合にして出したって、力がないですから。面白くないし。そういうことを考えていたら、何やったらいいのかわからなくなって。結局『アリスクラブ』っていうロリコン雑誌作りましたけど(笑)。結構売れたんだけど、やってて面白くなかったから人に任せちゃいました。
『写真時代』の発禁でみなさんに迷惑かけちゃったこともあるし、自分が何やったらいいのかわからなくなったのもあって、気分が塞ぎ込んじゃって。それでパチンコにハマったんです。で、『パチンコ必勝ガイド』を出すようになったんだけど。
『パチンコ必勝ガイド』っていうタイトルは、新宿でパチンコを打ったときにフッと浮かんだ。「パチンコ必勝ガイド……うん、いいじゃない」とか思って。もうカルチャーっぽいことはしたくなかったから、即物的に『パチンコ必勝ガイド』。そこでさ、『パチンコカルチャー』みたいなタイトルにしちゃったら、「なんだ、お前はまだカルチャーに未練があるのか」とか思われるじゃない(笑)? だから、カルチャーのかけらもないようなタイトルにしたかったわけ。
なんかね、個人的にはさ、『BRIO』とか『サライ』とか、そういう気取ったタイトルが恥ずかしいっていうのもあるんだよね。「ナニが『サライ』だよ」って感じがしちゃうんだよ(笑)。
あとね、タイトルに妙に意味を持たせるのも恥ずかしいんだよね。昔、白夜書房で『ビリー』っていう雑誌があったんだけど、そのときは、ビリー・ザ・キッドの「ビリー」、ビリー・ホリデイの「ビリー」、ビリー・ジョエルの「ビリー」(笑)。そういうアウトロー的な雑誌という意味なんだろうけど、なんかそういうのが恥ずかしくてさ。まあ、『ビリー』は死体雑誌になっちゃったけど(笑)。
そういう説明しなきゃわかんないタイトルよりも、雑誌の内容とタイトルがパッと繋がるというのが一番いいんじゃないかな。そういうのが出たときは気持ちいいですよ。さっきも言ったけど、それさえ決まれば、もうその雑誌の8割くらいの内容は自分の中で出来ちゃうんですよ。まぁ、タイトルもセンスじゃないですかね(笑)。
編集術3
雑 昔、僕がやってた『MABO』っていう少女オカルト雑誌があったんだけど、全然売れなくてね。少女オカルト雑誌といっても、他に類似誌がないような雑誌だったから。強いて言えば占い雑誌みたいなものだったんだけど、もうちょっと宗教色が入ったような感じでさ、全然ダメだった。10万部出して9万部返ってきた。
いつもね、雑誌を作るときに精神的なことを考えちゃうんですよ。この『MABO』のときも色々考えちゃって、女の人を買いかぶってたの(笑)。「少女っていう別の生き物がいる」って。そして、彼女たちは悩んでいるって。
女の人には、少女期っていうのがあって、そのときの女の人は僕らとは、全然違う世界にいるみたいに思ってたのね。少女漫画の影響もあったんじゃないかな。だから、まあ、「悩める少女たちのための雑誌を作ろう」って思ってたけど。でも、実際はそうじゃなかった。あんまりオバサンも少女も変わらないんだよね(笑)。
だいたい、本とか雑誌を読む人は、どっちかというと内向的な人でしょう。だから、どこか精神的なものがないと売れないんじゃないかと思っている。
それは、パチンコ雑誌なんかの実用誌でもそうで、これは僕がパチンコにハマったから分かるんだけど、ものすごく孤独になるんだよね、パチンコやってると。たとえば、会社休んで一日中パチンコ打って、何万円か負けて、閉店の「螢の光」で店を出て、そのとき北風がピューッと吹いてたりすると、なんか社会に取り残されたような気分になって。「オレは今日何してたんだろう」って。話し相手もいないし。
そういう人が缶コーヒー買おうと思ってコンビニに寄って、ふとパチンコ雑誌に目が止る。なんだかしらないけど、パチンコのことを一生懸命研究している人たちがいる。読者コーナーでは、毎日負けている人が何か書いている。オレだけじゃないんだ、明日は頑張ろう、みたいな。それで、その人はパチンコ雑誌を買って帰る。だから、コンビニに置けばパチンコ雑誌は絶対売れると思いましたね。
それと、パチプロの故・田山幸憲さんと出会ったことも大きかったね。世の中には、いい人ゆえに社会から落ちこぼれてしまう人がいるって。会社に入って営業やらされても、人を騙すようなことが言えなくて落ちこぼれてしまう、そういう人がパチンコ屋にはいっぱいいるんじゃないかと思って。僕自身も社会に対して、どこかそういう気持ちを持ってたから、そういう人のためになるような雑誌を作りたい、という気持ちもあったわけ。
エロ雑誌は、女の裸を前にすると、大学教授も、土方もみんな平等になるっていうのがあるんですよ。女の裸を見るとさ、みんな「おっ!」と同じレベルになるでしょう、それが面白かった(笑)。そういうものってほかにないでしょう。
僕はまともにエロ雑誌作る気はなかったけど、エロを利用して別なことをやろうと思ってたんです。難しいことを書いていても、きわどいヌードがあれば売れるし。いまはそうは行かないけど。まぁ、人の弱味に付け込むというか(笑)。
僕はマーケティングみたいなものを信用していないところがあるんですよ。単にマーケティングしてね、「これこれこうやれば、売れますから、こういう雑誌を作りましょう」なんて言ってもさ、面白くないですよ、そんなもの。男性誌で、よくあるじゃない? 中高年の男性が理想とするような「別荘持って、蕎麦喰って、時計は何がいい」とかそういう雑誌。「男の桃源郷マガジン」って呼ぶらしいんだけど、それは1誌あればいいわけだから、それが売れたからって、よそが真似して作ってもしょうがないと思うんだよね。
マーケティングっていうのは、要は政治でしょう。大衆を調査して、大衆が受け入れる商品を売るという。それはあらかじめ売れることがわかることだから、面白くないし、別に編集者の仕事じゃないような気がするんだよね。編集ってさ、僕はクリエイティブなことだと思ってるから。
確かに今はね、全部マーケティングになってるから、クリエイティブなもの、理屈じゃないものっていうのは出すのが難しいから、マーケティングやったように見せかけないとダメなんだけど、そういうフリをして企画会議を説得させればいいんじゃないですか。
その雑誌を読んでみんなが元気になれるとか、気持ちが楽になるとか、そういうものが作れるといいと思いますね。
編集術4
雑誌の企画……まあ、企画もタイトルも、なんでも街に出て考えたほうがいいんじゃないですかね。机でアレコレ考えても面白い企画は出ないですよ。まぁ、「軍事研究」とか「GUN」みたいな雑誌は、街に出ると危ないから出ないほうがいいと思うけど(笑)。
僕が作った雑誌はだいたいストリート系なんですよ。ファッションはあんまり入ってないけど、風俗は雑誌を作る上で大きな要素だったから。
『写真時代』で言えば、当時は80年代だったから、割とストリートっていうことに大きな意味があった時代なの。街がどんどん変わって行くし、風俗も面白かったし、歩いている人も面白いし。
『写真時代』ではね、後半は連載が多くなってたから、考える企画も2、3本で良かったんだけど、前半は結構大変でね。毎月一人でいろいろ考えなくちゃならないから、よく街へ出て企画を考えてましたよ。街の片隅にある「3分間証明写真」なんかを見てさ、「あれで面白いことができないかなぁ」っていうアイディアがピャッと出したりとかね。で、実際にモデルを「3分間証明写真」のボックスの中に連れて行って、10秒の間に3つのポーズ、カツラを変えたり、表情を変えてもらったりとかね(笑)。まぁ、バカバカしいんだけど、そういうことは会社の中では思いつかないことでしょう。
歌舞伎町でビニ本並べて売ってる店の前を通ったら、「そうだ、ビニ本の特集しよう」とか思って。ビニ本のポーズってだいたい同じなんで、いろんなビニ本モデルの同じポーズを集めて並べたり。そうすると、そこから何か違ったイメージなり言葉なりが浮かんでくるんだよね。
『パチンコ必勝ガイド』でもさ、やっぱり「パチンコのことは、パチンコ屋で考える」ほうがいいと思う。会社にいて机に向かってパチンコのことを考えててもしょうがいでしょう。頭で考えてもアイディアは出てきませんからね(笑)。
あとね、会社の中にいると集中できない、というのもあるんだよね。当然、社内の誰かから声をかけられるし、中々一人になれない。一人になれないと、集中できないじゃないですか。
集中っていうとさ、何か一つのことを青筋たててカーっと考えるみたいなイメージを想像しちゃうかもしれないけど、そうじゃなくて、ただボーっと考えるんですよ、ボーっと。脳波が極端に上がり下がりするんじゃなくて、むしろ脳波が停止したような状態のほうが「集中してる」なんて言う人もいるしね。座禅を組んでボーっとしてる人がいるじゃないですか。雑念を考えないでボーっとしてるんだけど、そこに集中力が生まれるような気がする。そう考えると、やっぱり街に出て、歩いたりしてボーっとしているほうが集中できて、ピャッとアイディアが出るような気がしますね。
編集術5
アイディアってさ、貯金すると古くなるんだよね。
「今、いいアイディアを思いついた」っていうのはさ、そのとき出すと情報として考えると新鮮なわけじゃないですか。でも、それを貯金してしまうと鮮度が薄くなっちゃうの。価値が半減しちゃうんです。たぶんね、今思いついたいいアイディアも1ヶ月後、3ヶ月後には全然違うものになってると思うんだよね。
たまにね、「アイディアを暖める」とか言って貯金しちゃう人がいてね(苦笑)。何年も何年もアイディアを暖め続けてる人もいるんだけど、そういうアイデアはたいてい価値がないんですよ(笑)。
何か自分で限界のようなものを作っちゃってさ、「次はもう思い浮かばないかもしれない」なんて考えて、アイディアを貯金しちゃうのかもしれないけど、アイディアなんていくらでも出るんですから。「自分は無限に才能がある」と思って、どんどん出し切っていったほうがいいでしょうね。常に頭を空っぽにしておいたほうが、次のアイディアも出やすいし。
出し切るというのはさ、「アイディアをカタチにする」ということですよ。もちろん、アイディアをカタチにするまでには膨らませたり、付け加えたりすることはあると思う。「練る」とか「より面白くする」とかね。そういうのは必要だと思うんだけど、できるだけ早めにカタチにしたほうがいいでしょうね。
とりあえず、アイディアを思いついたら人に話したほうがいいんだよね。アイディアを貯金する人って、たいてい人に話さないんだけど、誰かに話すと、その人がまた色々意見を言うでしょ? それがまたアイディアに繋がるかもしれないわけでね。利用っていうと悪い言い方だけど、人の意見を利用してアイディアを練っていくのがいいんじゃないですかね。違う切り口で何かを言われることもあるわけだし。
どうしても、自分一人で考えていると固定概念みたいなものからなかなか脱皮できないところがあるんですよ。だから、思いついたアイディアはベラベラベラベラ喋りまくるのがいいと思いますよ。
そう言うとさ、また、「アイディアを盗まれる」なんていう人もいるんだけど、いいんだよ、盗まれたって(笑)。また考えればいいんだから。
雑誌は表紙(スエイ)
雑誌の表紙は大事ですよね。まず、一番最初に人目につくとこだから。雑誌のすべては表紙で決まりますよね。
表紙で、読者の好き嫌いが出るとマズいんですよ。書店で目立つことはいいことだけど、万人に好かれるような表紙じゃないといけない。よくさ、誰かが描いたイラストを表紙にする場合もあるんだけど、イラストだとさ、「このイラストが好き」「イヤだ」っていう人が出やすいと思うんだよね。だから、できるだけそういうことがないほうがいい。全ての人が受け入れられる表紙が一番良いんじゃないかな。
男性誌の表紙なんかだと、女性の顔が多いんだけど、人の顔っていうのは情報量多いからね。顔を見るとさ、色んなものを感じるじゃない? 「この人は綺麗だ」とか、「ブスだ」とか、「優しそうだ」とか、「ちょっとこの人、性格が悪そうだ」とかね。
でも、それがたとえば手の写真だったら、情報が少ないわけ。せいぜい「手が綺麗だな」くらいで、「優しそうだ」「性格が悪そうだ」っていう情報はないでしょう。そういう意味で一番情報量が多いのが顔だから、雑誌の表紙には割と顔を使う場合が多いんです。
僕が『写真時代』っていう雑誌を始めたとき……まぁ、これはエロ本なんだけど、エロ本じゃないフリをしようと思って、表紙にアイドルの顔写真を使うようにしてたんだよね。当時のエロ本の表紙といえば、いかにもって感じのセクシー女性のセミヌード写真だったから、それがアイドルなら本屋さんもエロ本とは思わないと思って。
エロ本ということになってしまうと、本屋さんの隅のエロ本コーナーに置かれてしまうわけ。『写真時代』が欲しいと思っても、エロ本コーナーに置かれていたら、気の弱い人はそこまで行けないでしょう。
ところが芸能人とか有名人が表紙に出てるとさ、本屋さんは「これは人目に付くところに置いてもいいんだな」ということで、通常のエロ本コーナーよりは、前のほうの棚に置いてもらえるじゃないですか。本屋さんはいちいち中味なんか見てないんだから。
だから、最初はタレント事務所に企画書だけを見せて、表紙撮影の交渉をしてね。企画書にはエロ本だとはいっさい書いてないから、すぐOKしてくれるんだよね。で、『写真時代』の創刊号は、そのころ人気のあった三原順子の写真になったんです。
撮影は田宮史郎さんに頼んだんだけど、田宮さんはヤル気になってタングステンライトなんか使ったもんだから、なんだかものすごい情感たっぷりの写真になってしまったんです。いまにも自殺しそうな表情の三原順子。つまり、「作品」にしちゃったんですね。これは表紙写真としては邪道なわけ。表紙写真の撮り方は、正面から大光量のストロボをパカッとたいて撮るんです。そうすると影が出ないから。表紙写真に影や情感は禁物なんです。万人に笑顔を振りまく影のない写真でないといけないわけ。
『写真時代』はそれでも内容が良かったから、創刊号は完売だったんだけど、あとから「なんていう雑誌だ。こんなひどい雑誌に載せるな」って三原順子のファンクラブから怒られちゃったりして。その時点で次の表紙写真を撮っていたから、2号目までは有名アイドルを使えたけど、3号目からは『写真時代』と言うと断られましたね。だんだんB級アイドルとかC級アイドルとかになっちゃってね(笑)。
『パチンコ必勝ガイド』の場合は、パチンコ台が表紙なんだけど、あれも顔なんですよ。パチンコを打つ人はまず、あの盤面を見るわけでしょう。パチンコにとっては盤面が顔だから、そういうことで盤面を大きく使い、内容豊富な景気良い感じを文字をいっぱい入れることで出したりして。
色の感じも大切で、表紙に黄色とか紫の色が多いと、雑誌は売れないんですよ。何故なら、黄色とか紫色って、みんなが好きな色じゃないからね。紫色なんていうのは、オカマとか特殊な人しか好きじゃないでしょう(笑)。黄色はカラスも嫌うらしいし。この前テレビでやってたんだけど、カラスがゴミ袋を食い破って困るということで、ゴミ袋を黄色と黒のストライブにしたら、カラスが来なくなったって。なんかスズメ蜂を連想するらしいんだね。寒色も「寒い感じ」を与えるからあまり使わない。必然的に赤とかピンクが多くなっちゃう。
文字は雑誌によるよね。パチンコ雑誌みたいにゴチャゴチャしたほうがいい場合もあれば、スッキリしたほうがいい場合もある。センスを売りモノにしてる雑誌はあんまりゴチャゴチャしてるとマズいんじゃないの? 『SWITCH』とか『エスクワイヤ』とかね(笑)。
最近の表紙でびっくりしたのはやっぱり『クウネル』だね。マガジンハウスのスローライフ系の雑誌。あれは過激ですよ。表紙は、ただその辺にあるような椅子とテーブルが写ってるだけでさ、普通そんなもん表紙にしないですよ(笑)。「椅子とテーブルがある」だけじゃ普通、誰も見ないでしょう。だから、僕は逆にそれが凄いと思ったけど。
まぁ、雑誌の表紙を考える上で一番手っ取り早いのは、本屋さんに行って雑誌をよく見ることだろうね。「ここに自分が作る雑誌を置いたらどうなるか」っていうことをよく考えたほうがいい。雑誌の表紙は相対だから、本屋さんで色んな雑誌が並んでる中で目立って、なおかつみんなから嫌われないものはナンなのか、というようなことを考えたほうがいいでしょうね。
余談だけど、表紙って作った編集者の性格が出るみたいなところもあるよね。だいたいわかる。保守的な人が作ると当たり前の表紙になるんじゃないかな。「こういうことを表紙でやると、ちょっと、売れないんじゃないか」とか。「あまりにも他の雑誌と違うから、いけないんじゃないか」とかね。そういう縛りみたいなものを自分の中に入れてしまうとさ、まあ、似たり寄ったりの雑誌になっちゃうと思う。
編集術2
雑誌はタイトル(スエイ)
雑誌はタイトルですね。
と言っても、その雑誌によって、どんなタイトルにすればいいかは違うんだけど。まずね、雑誌のタイトルは、「濁音を入れたほうがいい」と言われてますよね。『BRIO』『ガテン』『ダダ』『パチンコ必勝ガイド』とかね。「ダ」とか「ガ」とかが入っているほうが、言葉として強いでしょう。特にカタカナのタイトルをつけるときは、濁音が入ってたほうがいいんじゃないかな。今気付いたけど、僕がやってた『ウィークエンドスーパー』には濁音がないね(笑)。だから、3年しか持たなかったのかな(笑)。
『ウィークエンドスーパー』は一応は映画雑誌ということで、ゴダールの「ウィークエンド」から取ったんです。僕が観た映画で一番印象が強かったのが「ウィークエンド」だから。でも登録されてたんです。だから「スーパー」付けて『ウィークエンドスーパー』にしたわけ。映画のことはあんまり出てこない雑誌だったけど。
まぁ、濁音をつけるっていうのは、みんなが言ってる話だけど、『写真時代』のときはね、タイトルが決まったときに「これでもう大丈夫」と思ったの。大丈夫っていうか、自分の中で、その雑誌で何をやればいいかが見えてきたわけです。最初はね、『写真時代』っていうタイトルには結構反対があったんですよ。「漢字四文字のタイトルはダメだ」とか「時代」と付く雑誌は売れないとかね。
「時代」と付いているのは、『蛍雪時代』とか、『野生時代』とかがあったんだけど、ちょっと堅いから売れないんじゃないかみたいな意見が多かったのね。でも、その堅いところに意味があったんです。
『写真時代』で僕は「エロの既成概念をブッ壊せ」とか「写真の既成概念をブッ壊せ」とか「みんなを驚かせてやろう」とか考えていたから、それは当然過激な内容になると思っていたから、タイトルは平凡なほうがいいんです。それに、売る要素はエロだと決めていたから。でも、エロ雑誌に思われたら困るわけ。エロ雑誌のコーナーに入っちゃうと売れないから。だから、エロっぽいタイトルだとマズいわけです。『写真時代』なら、本屋の人も「写真の雑誌なんだな」と思って写真雑誌やカメラ雑誌のコーナーに置いてくれるという目算があった。中身なんかいちいち見ないですから。
『写真時代』は、なんと言っても荒木経惟さんだけど、最初はね、荒木さんから「『ダゲール』ってタイトルどう?」って言われたの、ちょっと恥ずかしそうに(笑)。荒木さんは写真の歴史をよく知ってるからさ、だから、「ダゲール」とか「ニエプス」なんていう名前が出てきたと思うんだけど、結局僕が出した『写真時代』っていう案を荒木さんと相談して、それで決まったの。
その『写真時代』が売れて、7年半続いたんだけど、発禁になっちゃってね。そのときはもうエロをやる雑誌は作りたくなかった。もう全部『写真時代』でやっちゃったから。それに、カルチャーっぽいこともやりたくなかった。カルチャーをいかにも「カルチャー雑誌です」って具合にして出したって、力がないですから。面白くないし。そういうことを考えていたら、何やったらいいのかわからなくなって。結局『アリスクラブ』っていうロリコン雑誌作りましたけど(笑)。結構売れたんだけど、やってて面白くなかったから人に任せちゃいました。
『写真時代』の発禁でみなさんに迷惑かけちゃったこともあるし、自分が何やったらいいのかわからなくなったのもあって、気分が塞ぎ込んじゃって。それでパチンコにハマったんです。で、『パチンコ必勝ガイド』を出すようになったんだけど。
『パチンコ必勝ガイド』っていうタイトルは、新宿でパチンコを打ったときにフッと浮かんだ。「パチンコ必勝ガイド……うん、いいじゃない」とか思って。もうカルチャーっぽいことはしたくなかったから、即物的に『パチンコ必勝ガイド』。そこでさ、『パチンコカルチャー』みたいなタイトルにしちゃったら、「なんだ、お前はまだカルチャーに未練があるのか」とか思われるじゃない(笑)? だから、カルチャーのかけらもないようなタイトルにしたかったわけ。
なんかね、個人的にはさ、『BRIO』とか『サライ』とか、そういう気取ったタイトルが恥ずかしいっていうのもあるんだよね。「ナニが『サライ』だよ」って感じがしちゃうんだよ(笑)。
あとね、タイトルに妙に意味を持たせるのも恥ずかしいんだよね。昔、白夜書房で『ビリー』っていう雑誌があったんだけど、そのときは、ビリー・ザ・キッドの「ビリー」、ビリー・ホリデイの「ビリー」、ビリー・ジョエルの「ビリー」(笑)。そういうアウトロー的な雑誌という意味なんだろうけど、なんかそういうのが恥ずかしくてさ。まあ、『ビリー』は死体雑誌になっちゃったけど(笑)。
そういう説明しなきゃわかんないタイトルよりも、雑誌の内容とタイトルがパッと繋がるというのが一番いいんじゃないかな。そういうのが出たときは気持ちいいですよ。さっきも言ったけど、それさえ決まれば、もうその雑誌の8割くらいの内容は自分の中で出来ちゃうんですよ。まぁ、タイトルもセンスじゃないですかね(笑)。
編集術3
雑誌は心(スエイ)
雑 昔、僕がやってた『MABO』っていう少女オカルト雑誌があったんだけど、全然売れなくてね。少女オカルト雑誌といっても、他に類似誌がないような雑誌だったから。強いて言えば占い雑誌みたいなものだったんだけど、もうちょっと宗教色が入ったような感じでさ、全然ダメだった。10万部出して9万部返ってきた。
いつもね、雑誌を作るときに精神的なことを考えちゃうんですよ。この『MABO』のときも色々考えちゃって、女の人を買いかぶってたの(笑)。「少女っていう別の生き物がいる」って。そして、彼女たちは悩んでいるって。
女の人には、少女期っていうのがあって、そのときの女の人は僕らとは、全然違う世界にいるみたいに思ってたのね。少女漫画の影響もあったんじゃないかな。だから、まあ、「悩める少女たちのための雑誌を作ろう」って思ってたけど。でも、実際はそうじゃなかった。あんまりオバサンも少女も変わらないんだよね(笑)。
だいたい、本とか雑誌を読む人は、どっちかというと内向的な人でしょう。だから、どこか精神的なものがないと売れないんじゃないかと思っている。
それは、パチンコ雑誌なんかの実用誌でもそうで、これは僕がパチンコにハマったから分かるんだけど、ものすごく孤独になるんだよね、パチンコやってると。たとえば、会社休んで一日中パチンコ打って、何万円か負けて、閉店の「螢の光」で店を出て、そのとき北風がピューッと吹いてたりすると、なんか社会に取り残されたような気分になって。「オレは今日何してたんだろう」って。話し相手もいないし。
そういう人が缶コーヒー買おうと思ってコンビニに寄って、ふとパチンコ雑誌に目が止る。なんだかしらないけど、パチンコのことを一生懸命研究している人たちがいる。読者コーナーでは、毎日負けている人が何か書いている。オレだけじゃないんだ、明日は頑張ろう、みたいな。それで、その人はパチンコ雑誌を買って帰る。だから、コンビニに置けばパチンコ雑誌は絶対売れると思いましたね。
それと、パチプロの故・田山幸憲さんと出会ったことも大きかったね。世の中には、いい人ゆえに社会から落ちこぼれてしまう人がいるって。会社に入って営業やらされても、人を騙すようなことが言えなくて落ちこぼれてしまう、そういう人がパチンコ屋にはいっぱいいるんじゃないかと思って。僕自身も社会に対して、どこかそういう気持ちを持ってたから、そういう人のためになるような雑誌を作りたい、という気持ちもあったわけ。
エロ雑誌は、女の裸を前にすると、大学教授も、土方もみんな平等になるっていうのがあるんですよ。女の裸を見るとさ、みんな「おっ!」と同じレベルになるでしょう、それが面白かった(笑)。そういうものってほかにないでしょう。
僕はまともにエロ雑誌作る気はなかったけど、エロを利用して別なことをやろうと思ってたんです。難しいことを書いていても、きわどいヌードがあれば売れるし。いまはそうは行かないけど。まぁ、人の弱味に付け込むというか(笑)。
僕はマーケティングみたいなものを信用していないところがあるんですよ。単にマーケティングしてね、「これこれこうやれば、売れますから、こういう雑誌を作りましょう」なんて言ってもさ、面白くないですよ、そんなもの。男性誌で、よくあるじゃない? 中高年の男性が理想とするような「別荘持って、蕎麦喰って、時計は何がいい」とかそういう雑誌。「男の桃源郷マガジン」って呼ぶらしいんだけど、それは1誌あればいいわけだから、それが売れたからって、よそが真似して作ってもしょうがないと思うんだよね。
マーケティングっていうのは、要は政治でしょう。大衆を調査して、大衆が受け入れる商品を売るという。それはあらかじめ売れることがわかることだから、面白くないし、別に編集者の仕事じゃないような気がするんだよね。編集ってさ、僕はクリエイティブなことだと思ってるから。
確かに今はね、全部マーケティングになってるから、クリエイティブなもの、理屈じゃないものっていうのは出すのが難しいから、マーケティングやったように見せかけないとダメなんだけど、そういうフリをして企画会議を説得させればいいんじゃないですか。
その雑誌を読んでみんなが元気になれるとか、気持ちが楽になるとか、そういうものが作れるといいと思いますね。
編集術4
企画は街で考える(スエイ)
雑誌の企画……まあ、企画もタイトルも、なんでも街に出て考えたほうがいいんじゃないですかね。机でアレコレ考えても面白い企画は出ないですよ。まぁ、「軍事研究」とか「GUN」みたいな雑誌は、街に出ると危ないから出ないほうがいいと思うけど(笑)。
僕が作った雑誌はだいたいストリート系なんですよ。ファッションはあんまり入ってないけど、風俗は雑誌を作る上で大きな要素だったから。
『写真時代』で言えば、当時は80年代だったから、割とストリートっていうことに大きな意味があった時代なの。街がどんどん変わって行くし、風俗も面白かったし、歩いている人も面白いし。
『写真時代』ではね、後半は連載が多くなってたから、考える企画も2、3本で良かったんだけど、前半は結構大変でね。毎月一人でいろいろ考えなくちゃならないから、よく街へ出て企画を考えてましたよ。街の片隅にある「3分間証明写真」なんかを見てさ、「あれで面白いことができないかなぁ」っていうアイディアがピャッと出したりとかね。で、実際にモデルを「3分間証明写真」のボックスの中に連れて行って、10秒の間に3つのポーズ、カツラを変えたり、表情を変えてもらったりとかね(笑)。まぁ、バカバカしいんだけど、そういうことは会社の中では思いつかないことでしょう。
歌舞伎町でビニ本並べて売ってる店の前を通ったら、「そうだ、ビニ本の特集しよう」とか思って。ビニ本のポーズってだいたい同じなんで、いろんなビニ本モデルの同じポーズを集めて並べたり。そうすると、そこから何か違ったイメージなり言葉なりが浮かんでくるんだよね。
『パチンコ必勝ガイド』でもさ、やっぱり「パチンコのことは、パチンコ屋で考える」ほうがいいと思う。会社にいて机に向かってパチンコのことを考えててもしょうがいでしょう。頭で考えてもアイディアは出てきませんからね(笑)。
あとね、会社の中にいると集中できない、というのもあるんだよね。当然、社内の誰かから声をかけられるし、中々一人になれない。一人になれないと、集中できないじゃないですか。
集中っていうとさ、何か一つのことを青筋たててカーっと考えるみたいなイメージを想像しちゃうかもしれないけど、そうじゃなくて、ただボーっと考えるんですよ、ボーっと。脳波が極端に上がり下がりするんじゃなくて、むしろ脳波が停止したような状態のほうが「集中してる」なんて言う人もいるしね。座禅を組んでボーっとしてる人がいるじゃないですか。雑念を考えないでボーっとしてるんだけど、そこに集中力が生まれるような気がする。そう考えると、やっぱり街に出て、歩いたりしてボーっとしているほうが集中できて、ピャッとアイディアが出るような気がしますね。
編集術5
アイディアを貯金しない(スエイ)
アイディアってさ、貯金すると古くなるんだよね。
「今、いいアイディアを思いついた」っていうのはさ、そのとき出すと情報として考えると新鮮なわけじゃないですか。でも、それを貯金してしまうと鮮度が薄くなっちゃうの。価値が半減しちゃうんです。たぶんね、今思いついたいいアイディアも1ヶ月後、3ヶ月後には全然違うものになってると思うんだよね。
たまにね、「アイディアを暖める」とか言って貯金しちゃう人がいてね(苦笑)。何年も何年もアイディアを暖め続けてる人もいるんだけど、そういうアイデアはたいてい価値がないんですよ(笑)。
何か自分で限界のようなものを作っちゃってさ、「次はもう思い浮かばないかもしれない」なんて考えて、アイディアを貯金しちゃうのかもしれないけど、アイディアなんていくらでも出るんですから。「自分は無限に才能がある」と思って、どんどん出し切っていったほうがいいでしょうね。常に頭を空っぽにしておいたほうが、次のアイディアも出やすいし。
出し切るというのはさ、「アイディアをカタチにする」ということですよ。もちろん、アイディアをカタチにするまでには膨らませたり、付け加えたりすることはあると思う。「練る」とか「より面白くする」とかね。そういうのは必要だと思うんだけど、できるだけ早めにカタチにしたほうがいいでしょうね。
とりあえず、アイディアを思いついたら人に話したほうがいいんだよね。アイディアを貯金する人って、たいてい人に話さないんだけど、誰かに話すと、その人がまた色々意見を言うでしょ? それがまたアイディアに繋がるかもしれないわけでね。利用っていうと悪い言い方だけど、人の意見を利用してアイディアを練っていくのがいいんじゃないですかね。違う切り口で何かを言われることもあるわけだし。
どうしても、自分一人で考えていると固定概念みたいなものからなかなか脱皮できないところがあるんですよ。だから、思いついたアイディアはベラベラベラベラ喋りまくるのがいいと思いますよ。
そう言うとさ、また、「アイディアを盗まれる」なんていう人もいるんだけど、いいんだよ、盗まれたって(笑)。また考えればいいんだから。