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スエイさんが会いに行く



第1回 バッカスのママ

 スエイさんが仕事の合間をみては足しげく通っていたという、高田馬場栄通りのスナック「バッカス(現在は閉店)」のママにお話をうかがいました。スエイさんやその周辺の方々の、品ある(?)楽しい思い出をじっくりうかがいました。

「お顔がいい子」ばっかりだったから、
毎日お客と喧嘩よ

最初に高田馬場で商売をされたのはどれくらい前の話なんですか?

ママ (テレコを差して)これ今入ってんの? ヤダもう(照)。……あのね、今は駅前がロータリーになってるけど、あの辺りに広場があって、そこで「トリスバー」っていう店を始めたのが昭和32年。女子大生を8人くらい雇って。雇ってた女の子達は「お顔がいい子」ばっかりだったから、学生のお客さんは雇ってた女子大生に夢中でさ、毎日お客と喧嘩よ。みんな飲んでるからね。で、学生のお客さんにとっては、私は雲の上の存在なわけ。当たり前よね、私だってそんなガキを相手にするか。

一同 (爆笑)

スエイ 写真を見せてもらったことがあるけど、ママも昔は凄い美人だったよね。今が「美人じゃない」とは言わないけど(笑)。

島本 俺も見せてもらったことある。水着の写真。

ママ それから40年経ってるんだから、割り引いて考えてね(笑)。だから、私は学生じゃなくて、学校の先生のほうを相手にしてね。私、先生にモテたんだよ。モテたねぇ……。明治の英文学の先生だとか、東大出の内科のお医者さんとかね。

スエイ インテリにモテるの?

ママ YES。

スエイ 英語で返事しなくてもいいよ(笑)。

一同 (爆笑)

ママ 私は水商売っ気がなかったのよ。素人っぽいから先生達から気に入られちゃったんだろうね。けっして美人じゃないけど、性格はいいから。

だから最初はね、
みんな私のことを
「ケチだ」って言ってた

●で、「トリスバー」をヤメて、栄通りに「バッカス」をオープンされたんですか?

ママ そう。「トリスバー」は安い値段でお酒を出してたから、従業員にお金を払えなくなっちゃってね。で、さかえ通りに弟と一緒に「バッカス」を出したの。「バッカス」ってお酒の神様でしょ? ギリシャ神話に出てくるんだけどね。でも、私は一滴も飲めないの、お酒は。だから最初はね、みんな私のことを「ケチだ」って言ってた。

●なんでお酒が飲めないとケチなんですか?

ママ 「本当はお酒が飲めるのに、ケチして飲んでないんじゃないか」とかね。でも、高田馬場でスナックやってた人で、死んじゃった人は今までさんざん飲んできた人なの。だから、私は生きてるの。おほほほ(笑)。

島本 「バッカス」のママは、高田馬場の三大名物ママのうちの一人なんだよね。

ママ あの頃はね(笑)。だからね、お客さんと飲まなければいけないときは、ブラッディーマリーのフリをして、トマトジュースを飲んでたよ(笑)。

●今はもう閉店されて5年くらい経つと聞いてますけど、栄通りのどの辺に「バッカス」はあったんですか?

スエイ 「エクセル」っていうラブホテルがあるんだけど、その前(笑)。当時、ママは「バッカス」の2階に一人で住んでたんだけど、ちょうどママの部屋の向かい側がラブホテルの2階でね。一度、僕が援助交際で女の子とセックスして、ガラっと窓を開けたらママが寝てたことがあった。

一同 (爆笑)

スエイ 目と鼻の先でセックスしてたの(笑)。

ママ あそこは凄かったよ。わざわざ(セックスを)見せてくるのもいたしね。そうかと思うとね、男同士の声もあったよ。

●男同士ですか?

ママ そう。そんな世界を知らないでしょ、私は。あり得ないよ。凄いんだ、声が。「オェ~、アゥ~、オェ~」って凄いエキサイティングなの。

一同 (爆笑)

そしたらスエイさんがね、
「このカウンターを新調してやる!」
って言ってくれてね

●そもそも、スエイさんがその「バッカス」に行き始めたきっかけは?

スエイ 島本さんに連れてってもらったんじゃないかなぁ。20年くらい前? それからずーっと通ってね。週イチか週に2回とか。付き合ってた女の人は、必ず「バッカス」にママに見せに行ってたよ(笑)。だから、僕の彼女だった人をママは全員知ってる(笑)。

ママ 忘れちゃうくらい色んなのを連れてきてたね(笑)。

スエイ だいたい20時とかから飲みに行って夜中までいてね。チンチロリンをやってるときは朝までいて。腕が上がらなくなったりして(笑)。

ママ あるときスエイさん、物凄くお金が入ったらしくてさ、「ママ、高いもの出せ!」って言うのよ。でも、うちの店はそんな高いモノなんか置いてなくて、一生懸命売り上げたって、一晩4万円くらいにしかなんないようなものばっかり。そしたらスエイさんがね、「じゃあ、このカウンターを新調してやる!」って言ってくれてね。あのときは嬉しかったねぇ。

スエイ 先物取り引きで金を買ったんだけど、ブラックマンデーっていうのがあって株価が急に下がってね。株価が下がると、金が暴騰するっていう説があったの。それで、計算上は何千万も儲かってるはずだったから、異常に気分が高揚しててね(笑)。

●それでカウンターは新調してあげたんですか?

スエイ ところが次の日に、600万損しちゃって。

ママ 「お金なくなっちゃった」って(笑)。あのとき、お金をもらっておけば良かったよ(笑)。

その男の人がね、
座ったままカウンターに
モノを出してるの

●島本さんの「バッカス」での武勇伝みたいなものはないんですか?

島本 ないねぇ。

スエイ 島本さんはあんまりチンポ出したりしないしね(笑)。

ママ 島ちゃんは「悲しい酒」なんかを歌うと凄い上手いから。で、私がセリフを言わせてもらったりしてね。

本 踊りまくって(笑)。ワイヤレスマイクだから、店の外に出たり入ったりして、大騒ぎするの流行ってたよね。

●そんな大騒ぎされて、店は迷惑じゃなかったんですか?

ママ もう人を好きになっちゃうからね。なんでもかんでも許しちゃう。だから、「その人によって」だけども。

スエイ だから居心地がいいみたいなところはあったんだよね。普通、一見の店とかに行くと、やっぱ警戒しちゃうよね。「ここはチンポ出したらヤバい店かなぁ」とかね(笑)。

一同 (爆笑)

ママ 前に、全然知らない一見さんが入ってきたことがあったの。スプリングコートを着たキチッとしたサラリーマンの人。で、「いらっしゃいませ」って両サイドに女の子が座ったのよ。で、私は奥でおつまみを作ってたら、女の子達が急に「キャーッ」って言うのよ。何かと思ったら、その男の人がね、座ったままカウンターにモノを出してるの。

一同 (爆笑)

ママ 私、最初、膝小僧かと思った(笑)。それくらいデカいのよ。だって、うちのカウンターは背が高いのにさ、そんなところにモノが出るとは思わないじゃない? 本当に「ピンッ」と元気なんだよ。

一同 (爆笑)

スエイ 露出狂。見せたいんだ(笑)。

ママ それでね、私も純情だから「あなた、入るお店間違ってませんか?」って言って。そしたら、その人「ワウゥ~、ワウゥ~、ワウゥ~」って(笑)。

●逆に興奮しちゃってる(笑)。

ママ で、私オロオロしちゃって。恐いからそばにも行けないしさ。そしたらお馴染みさんがたまたまお店に来てくれて。それで、そのサラリーマンはお金を投げて、店からパーっと帰ったけど。後で女の子達がさ、「でも、ダイナミックだったよぉ」って(笑)。私も「もう一度見たい」と思った。今度はジックリと(笑)。

スエイさん、
隅のほうで何コチョコチョやってるんだろう、
と思った。そしたら、自分でモミモミしてて(笑)

●スエイさんも「バッカス」では、有名なチンポ事件があるそうですが。

スエイ あるとき僕達が「バッカス」で飲んでたら隅のほうでイチャイチャしながら飲んでるカップルがいたのね。で、「口説きカラオケ」っていうかね、男が歌いながらさ、「俺は歌ウマいんだぞ」みたいな感じで歌うわけよ。僕はそういうのがイヤでね。「カラオケは大騒ぎして踊りながら歌う」と思ってるから(笑)。で、そのカップルに「なんかシンミリやってるな、ヨシ。盛り上げてやろう」ということで、その男が歌ってるときにタンバリンとかを持ってシャカシャカやって踊ってたわけ。そしたら女のほうが僕にキレて、「うるせぇ」って言ったわけ。

ママ えぇ? そうだったの? そんなこと言う人達じゃないけどね。

スエイ でも、そう言われてさ。で、「俺たちだって、一生懸命やってあげてんのに『うるせえ』とはナンだ」って。「そんなことを言うと、チンポ出すぞ」って言ってさ。

一同 爆笑

スエイ で、その女が「出せるものなら、出してみなさい」って言うから、「ヨ~シ!」とか言って(笑)。

ママ それでスエイさん、隅っこに行ったんだ(笑)。あのとき私、スエイさん、隅のほうで何をコチョコチョやってるんだろう、と思った。そしたら自分でモミモミしてて(笑)。

スエイ 「チンチンを大きくして」ということだよね。

ママ そんなこと言えない。で、しばらくしたら潜望鏡がカウンターを右から左へと行ったり来たりしてるの。

一同 (爆笑)

スエイ そのカップルに、わざとチンチンが見えるような位置で歌ってね(笑)


スエイさんがね
「ここは会員制なんだよ」って
言ってくれて、その人は黙って帰っていった

●さっきも出ましたけど、お店では、しょっちゅうチンチロリンをやってたんですか?

スエイ うん。だいたい「バッカス」に行くと、カウンターにチンチロリンのドンブリが用意してあってね。それでママと山ちゃんとチンチロリンをいつもやってた。ママは負けないようになってるんだけど(笑)。でも、一度僕が「バッカス」でチンチロリンやって勝ったとき、お札を体に貼り付けて愛人宅まで行ったことあるな(笑)。品ないなぁ、とか思いながらね。

●山崎一夫さん(銀玉親方)もよく一緒に「バッカス」に行かれてたんですか?

スエイ うん。山ちゃんも失恋してカウンターで泣いたりして。

ママ 私、山ちゃんのお守りを朝4時までしたことあるんだから。

●「バッカス」には和む雰囲気があったんでしょうね。

島本 そうだね。でも、一度さ、ガラの悪い関西人のサラリーマンが店に入ってきたことがあって、あれがイヤだった、俺。ママに向かって「ババァ」とか言ってさ、長いことお店をやってきてるのに、なんでこんな新しい客にそんなこと言われなきゃいけないんだよ、よく耐えてるなあ……と思ってさ。

ママ でもね、私が「耐えてる」っていうのは、それはいいお客さんだからだよ。私はお金で動く女じゃないからね。「金で動く」と思われると、余計腹がたつよ。「なめんじゃねえよ」っつーもんだよね(笑)。一度、フリーの客が入ってきたときに私が断わったらさ、「どうして僕を入れてくれないんですか?」って言われたことがあって。私が言葉に詰まってたら、スエイさんがね「ここは会員制なんだよ」って言ってくれて、その人は黙って帰っていった。救われたよ、本当に(笑)。

スエイ 中々いいこと言うよね、僕は(笑)。ママは一人でやってるから知らないお客さんは入れたくないんだよね。優しそうな人でもさ、酔うと何するかわかんないし、お金持ってない場合もあるかもしれないし、キチガイもいるからね。

スエイさんの奥さんが「混浴ですよ」って。
そう言われたら、
私一人で部屋に残るわけにもいかないから……

●「バッカス」が閉店してからのママとスエイさん達とのおつき合いは?

ママ この前、5年ぶりくらいに連絡をもらって、吉野川っていう温泉に連れてってもらったの。私、お店をヤメてからずっと病気してたから、凄い嬉しかったよ。ビックリしちゃった。で、スエイさんに背中を流してもらってね。

スエイ チンポすりつければ良かったんだけどね(笑)。

ママ ヤメてよ(笑)。でも、楽しかったわ。全然疲れなかったの。外反母趾で歩くのもツラいんだけど、「いいよ、オンブでもなんでもするから」って言われて。で、片道5時間もかかるんだよ、吉野川って。でもね、平気なんだよ。全然疲れなかったし、凄く楽しかった。

島本 みんなで風呂に入ったのが良かったよね。

ママ 混浴なんて私はしたことないんだけど、スエイさんの奥さんが「混浴ですよ」って。そう言われたら、私一人で部屋に残るわけにもいかないから……。

スエイ だからママ、最初は部屋でモジモジしてたんだよね。

一同 (爆笑)

ママ そりゃそうよ。若い人の体なら良いけどね。この体じゃ見せられないよ。恥ずかしかったよ。

スエイ でも、ママのオッパイは綺麗だよ。今でも。

ママ 可愛いでしょ(照)。大人の口じゃなくて赤ちゃんの口しか入らないくらい、(乳首が)小っちゃい。

一同 (爆笑)

スエイ でも小っちゃいほうがいいんじゃないの?

ママ だから、赤ちゃんの口なら良いけども……。

スエイ 物足りない?

ママ 物足りないよ。こんなこと言えるのは、このメンツだけだよ(笑)。でね、その温泉に行ったときに島ちゃんがこっちを向いてたの。そしたらね、あのピンクの奴が湯気でピッと出てるの。

島本 え? 何、俺のが?

ママ そう「俺の」が。チョコっと花弁のようにピンクなのよ、先が。先っていうか割れ目か。男だってあれ割れてるよね?

一同 (爆笑)

ママ 私、感動した。あんまりしげしげと見たことないからね、ピンクの花弁(笑)。いや、いいモノを拝ましてもらった(笑)。

●では、チンポの話も落ち着いたところで(笑)。ママから見て、スエイさん達はどういう人達だったと言えますか?

ママ 何やられたって変に感じない、いいお客さんだよ。普通なら、お店の隅でモミモミされたら怒るのかもしれないけどね(笑)。「何してんだ!」って(笑)。でも、私も一緒になって楽しんでたもんね。スエイさん達がうちの店では一番ハッスルしてくれたよ(笑)。だから、凄く楽しかった。お陰さんでスエイさん達からはいいモノを見せていただきました。

一同 (爆笑)

ママ そんな感じです。スエイさん達がお店に来てくれると、凄い楽しかったよ。



第2回 須田栄司さん

 スエイさんの30年来の友人で、フィリピン・レイテ島で戦没者の英霊を発掘する活動をされている須田栄司さん。「須田さんのメチャクチャな生き方が好きだ(スエイ)」という言葉にあるように、その人生は一筋縄ではいきません。その須田さんの人生を辿りながら、スエイさんとの思い出を語っていただきました。



営業マンが
「この機械を買えば、金が儲かる」
っていうわけよ

●まず、須田さんとスエイさんが出会った頃の話からお聞きしたいのですが。

須田 もう、30ウン年になるね。きっかけはなんだっけ? 

スエイ 僕が雑誌を始めたころだと思うけど。

須田 『ニューセルフ』だ! スエイさんから俺が原稿もらってさ、俺が写植を打ってたの。スエイさんが事務所に泊り込んでるところに写植を持ってったりとかさ。スエイさんは当時から全然変わんないよ。

●じゃあ、須田さんは最初は写植屋さんだったんですか。

須田 いや、最初は運送屋。

●運送屋さんから写植屋さんになれるもんなんですか。

須田 うん。俺は高校を途中で辞めちゃったんだけど、そのときに12歳離れてる、一番上の兄貴に言われたの。「学歴のない奴はダメだ」「社会でやってけない」と。固い兄貴だったんだけど、うちの親父が小学校2年生のときに死んじゃってるから、俺にとっては親父代わりでさ。で、すぐ上の兄貴と3人で運送屋やろうかってことになって始めたわけ。で、やってたんだけど、俺が会社の金ごまかしちゃってね(笑)。「会社乗っとられる」とか兄貴にナンヤカンヤ言われて、その運送屋は喧嘩別れしちゃったわけ。で、俺も金がないからさ、しょうがないから1年だけよその運送屋でクルマに乗ったわけ。で、そのときに運んでたのが写研の写植機でさ。写植機を運んでると、だんだんその営業マンと友達になるじゃん。そうしたらさ、写研の営業マンが「この機械を買えば、金が儲かる」っていうわけよ。それで写植機を買って、写植を覚えたの。

ホテルのロビーが
フィリピンの女だらけに
なっちゃって

●最初は普通の写植屋さんと編集者の関係だったんですね。

須田 うん。俺が写植屋になったのが27か28歳くらいだから、そのすぐ後。

●仕事上の付き合いから仲良くなるようになったのはナンだったんですか?

須田 うーん……きっかけはないけど、スエイさんはこういう人だからさ。

スエイ かいつまんで言うと、知り合った頃の須田さんは写植屋をやってたんだけど、何故かいきなりヤメて、今度はフィリピンの海老を輸入する仕事を始めてね。「儲かんない」とか言いながらやってたんだけど、しばらくしたら電話あって、今度は女をフィリピンから輸入して。キャバレーとかに送り込む仕事を始めたの。で、「遊びに来い」って言われて池袋に行ったら、フィリピン人の女の子が4人くらい待ってるわけ。で、アパートに連れて行かれて、セックスをするわけ(笑)。だから、節目節目に須田さんとは会ってるんだけど、コロコロ仕事を変わるのが面白いと僕は思ってて。

●運送屋さんから写植屋さんも凄いですけど、写植屋さんからフィリピンも凄いですね。

須田 (理由が)なんかあったんだろうね。女の仕事はね、最初、俺がマニラで旅行会社を始めてさ。日本から団体のツアー客……企業の慰安旅行みたいのが来るとさ、現地を案内したり、女を世話したりしてたの。ところがね、電気屋かなんかのツアーをやったらさ、ホテルのロビーがフィリピンの女だらけになっちゃって。それが問題になってできなくなっちゃって、それじゃあ、日本に女を連れてこうってなっていうことでやってたの。 

頭にきて、
蹴ったんだよ、
応接セットの椅子(笑)

●運送屋、写植屋、海老、女……でも、いずれも後に凄く流行った商売ですよね(笑)。そういう意味では先駆者的な仕事ばかり。

須田 早すぎるんだよ、俺(笑)。写植屋のときもね、校正とかをいちいちスエイさんに持って行ったりしなきゃいけないんだけど、ファックスを置けばさ、校正の手間がかからないからいいじゃん。それに気付いて130万くらいのを入れたんだけど、それも早すぎてダメだった。

スエイ でも、そういう須田さんが右翼になったからビックリしちゃったよ(笑)。

須田 「求道塾」っていう右翼団体をやってたんだけど、「もうフィリピンに住んじゃう」ってことで、それは一昨年解散してね。街宣車も処分して、今は任意団体。看板背負ってるとさ、何かと言うとすぐコレ(手錠のポーズ)になっちゃうんだよ。だから、今は右も左もない、上も下もないっていうのをやってるんだけど。戦死した人間を、日本に連れて帰ってくるっていう「英霊を迎える会」っていうのをね。これは看板背負ってないから、多少は大丈夫なわけ。でも、今日さ、ちょっと机を蹴っ飛ばしたらさパトカーが来ちゃって(笑)。

スエイ どこで?

須田 郵便局で(笑)。頭にきて、蹴ったんだよ、応接セットの椅子(笑)。そしたらさ、「痛い、痛い」とか言って総務課長が言い出してさ、パトカーとか来ちゃって警察行って話してきた。まぁ、今は右翼団体を解散してるし、まぁ、向こうも被害届出さないように話したからってことで、隣(留置場)に行かなくて済んだ(笑)。だから、右翼団体は解散はしてるんだけど、公安が色々ついてるわけ、今でも(笑)。

厚生省が今まで
何もやってなかったって
ことなわけ

●須田さんは現在、フィリピン・レイテ島に英霊をまつる神社を建設しようと活動されている、とうかがってますが。

須田 レイテ島ではね、日本の兵士が8万人も死んでて、まだ埋まってるわけ。1万5千人は帰って来てるっていうんだけど、非常にいい加減なわけ。でも、もし、仮に1万5千人が帰ってきてたとしても、あとの6万5千人が、放っぽりっぱなしになってるってことなんだよ。

●現地のその辺を掘れば、すぐに骨が出てくるような状態。

須田 そう、早い話が。だって、素人の俺だけで、もう2千人分くらいを掘り出したわけだから。厚生省とかはさ、当時の戦況を知ってるわけじゃない。「部隊がこうやって動いた」とか、「ここで戦闘があった」とかね。探せばそういう資料があるはずなんだけど、全然やらない。だって、俺が何の手がかりもなくて探せるってことは、厚生省が今まで何もやってなかったってことじゃない?

スエイ 厚生省は探す気もなかったっていう。

須田 そう、ないの。なんとなく「戦争は終わったこと」っていう風潮があるじゃない? その原因は「遺骨収集」って言葉でもあるけど。収集って「物を集める」ってことだから、もう戦死した人たちを物扱いにしてるってことでしょう。だから、「放っといても、まぁいいや」って感じになるんじゃないの? で、逆に山で遭難した人は「遺体収容」って言うじゃない? それはいかにも人間らしい。だけど、この問題は物扱い。だからもう「遺骨収集」っていう言葉自体もヤメめさせよう、と。それが浸透すればさ、「生身の人間が死んだんだな」っていう実感が沸くじゃない。だから、今、政治家だとかに話してるわけ。

●それで「英霊」なんですね。

須田 うん。ただ、みんな早い話、都合のいいときだけ「英霊」って言いたがるよ。「英霊」って言ってると、例えば靖国神社だったら参拝客が来たりして金儲けができるじゃない。だけど、今度はじゃあ「英霊を探しに行く」っていうことになると、金がかかるからね。遺族にしても戦争で一緒に戦った人も、みんな銭も惜しいし、自分の老後が大事じゃない。と、そういうときは物扱いにしちゃうわけ。

 

 

 







こっちが拳銃を持ってるとは
思わなかったんだろうけど、
俺は持ってるからさ

●レイテ島ではいまだに反日感情が強いとのことですが。

須田 やっぱね、表面上は南国だからみんな明るいんだよ。でも、フィリピンってスペインの占領が長かったじゃない。スペインに400年。で、アメリカにまた40年。日本に3年くらい。植民地の歴史が長いから、すぐ物が無くなっちゃう(笑)。しかも、「盗ったのはこいつだ」って分かってるような状況でも絶対にシラを切るの。絶対に認めない。昔、「認めると殺されちゃう」とか「手を切られる」とか、そういう悲しい歴史があったんじゃない? 400年の間に、そういう鬱屈したものが深層にあるから、根が暗いわけ。執念深くて、陰険で、陰湿。それは住んでみなくちゃ分からないんだけどね。

スエイ 須田さんはなんでゲリラに撃たれたの?

須田 うーん……どういうことだったのかね。ちょうど掘ってるときに襲われてね。最初、向こうはこっちが拳銃を持ってるとは思わなかったんだろうけど、俺は持ってるからさ。それで撃ち合いになっちゃった。作業員はみんな逃げちゃうしさ。

●それは「英霊を掘ってる」ことに対して襲撃してきたんですか。

須田 それがわかんないんだよね。向こうには山下財宝っていう伝説があるわけ。山下将軍が隠したというアレね。それは、レイテの人間は「みんなどこかに絶対にある」と信じ込んじゃってるから、否定してもダメなんだけど、だから、ゲリラは俺が山下財宝を探してると思って襲ってきたのかもしれない。で、その銃撃戦で、そのときの銃弾の破片かなんかが、体に入っちゃったのね。

スエイ 足かなんか撃たれたの?

須田 腹と目。危ない、危ない。

●一番最初の運送屋さんからは想像できないですよね。こういう活動をするにあたってもきっかけがあったんでしょうか。

須田 一番のきっかけっていうのはね、中学生くらいのときにね、俺「インパル作戦」っていうのを読んだんだけど、戦闘内容が非常にヒドいわけよ。例えば、食料も何もない中に行かせられたり。それを読んでて、「いつかそこに行ってみたい」とずっと思ってたんだけど。で、商売やって潰れて、またやって潰れてという中で、じゃあ民族運動やろう、と。この世の中の不条理を正そう、となったんだと思う。なんか感じるものがあったんだろうね。

レジ開けたり商品持って
悠々と歩いていくんだけど、
しばらくして、お巡りが来るわけ

●レイテ島のゲリラは思想があるんでしょうか。

須田 レイテは共産ゲリラで、義賊っぽいところがあるの。例えばね、ある商店がアコギな商売をやるじゃない。すると住人がね、ゲリラに言いに行くわけよ。そうすると、その店をゲリラが襲うわけ。昼間だよ。で、レジ開けたり商品持って悠々と歩いていくんだけど、しばらくして、お巡りが来るわけ。ゲリラがいる間はお巡りは絶対来ない。

スエイ ゲリラのほうが強い?

須田 お巡りもゲリラを怖がってるから。お巡り3人をゲリラが殺したりね。そうなると、町のお巡りが、みんな逃げちゃって。

年中、桜田門に呼ばれても、
この道一筋できてる
それが凄いね

●須田さんから見たスエイさんはどんな方だと思われますか?

須田 スエイさんは昔から全然変わらないよね。オバケだよ。だって、格好だって全然変わらないもん、昔から。最初会ったときから同じ。年取らないよね。年中、桜田門に呼ばれても、この道一筋できてる。それが凄いね。だから、この道入って取締役になって。でも、全然変わらないよ、スエイさん。

スエイ でも、僕はもうスケベなことは一切しないから。奥さん一筋。

須田 ……それはどうか分かんないよね(笑)。

スエイ いや、本当ですよ。前はムチャクチャだったけどね(笑)。須田さんから「来い」って言われたら、すぐ行ってたし(笑)。

須田 でも、じゃあスエイさんはそういうところで、年をとったのかね?

スエイ 年はとってないんですよ。これは誓いだから。家の奥さんに対して、「ウソは一切つかない」っていう。もし、スケベをしたらウソを言わなきゃいけないでしょう。もう、ウソを言うのが面倒臭いんですよ(笑)。でも、須田さん、ちゃんと筋を通すのはえらいよね(笑)。「奥さんに離婚届を渡して、次の日に」って(笑)。普通ならそのまま逃げちゃいそうだけど。やっぱりね、須田さんは面白い人だと思うんだよね。だって写植屋から海老、女でしょ、で、今右翼なんだから。ムチャクチャっていったらムチャクチャだけど。

須田 俺、結構飽きっぽいんだよね、商売にしても何にしても。だけど、これだけは長続きしてる。自分でも不思議でしょうがない。

スエイ 感じるものがあるんだね。「英霊」が背後に何人かいるんじゃない? それに導かれて続いてるんじゃない?

須田 うん。くっついてんのかもわかんない(笑)。

スエイ 普通、人間って年を取るとそれ相応に自分の社会的位置みたいなものを決めてくじゃない? でも、須田さんにはそれがない。それがおかしいよね(笑)。

須田 そうだね。でも、「年を取ると子供に返る」っていうじゃない、そういうのはあるわけ。子供に返ってるんじゃないの(笑)? 俺さ、ときどき「一緒に写真撮らせてください」って言われるわけ、若い奴から。なんか、ドンガバチョ(のトラヒゲ)みたいなイメージがあるんじゃない? 

スエイ うん(笑)。リバイバルで「ひょっこりひょうたん島」が流行ってたしね(笑)。

須田 新宿で「演説してくれ」って言われてやることもあるんだけど、新宿だと外人が写真を撮るわけ。結構、有名人で人気者なんだよ、俺のキャラ(笑)。




※須田栄司さんは現在、いまだレイテ島に眠っている6万5千人の戦死者を祀る慰霊神社(宿泊もでき、参拝もできるところ)を建設しようと活動されています。写真にもあるように自民党の古賀誠衆議院議員、野中広務元衆議院議員もこの活動を支持されているようです。この活動に興味のある方は、こちらよりアクセスしてみてください。



第3回 渡辺和博さん

 伝説の漫画誌『ガロ』編集長を経て、フリーランスのイラストレーターとして活躍中の渡辺和博さん。鋭い洞察力と、エッセイの定評は御存じの通りと思いますが、スエイさんとは30年来の友人とのこと。今回は知り合った頃の思い出から、渡辺さんの最新刊「キン・コン・ガン!」のお話をうかがいました。


画廊のオープニングとかで挨拶するときにさ、
右側の後ろのほうから
「異議ナシ」って言う人が必ずいてね

●まず、渡辺さんとスエイさんとの御関係からお聞きしたいのですが。

渡辺 関係? 色んな関係がある。

●最初に出会われたのはいつ頃ですか?

渡辺 最初は仕事でね。25年くらい前。その頃はマックとかのコンピューターがなかったから、僕は手で原稿書いてたんだけど、字が下手だったの。スエイさんはそれを解読するのがうまかった。最初は『ウィークエンドスーパー』だったかな?

●25年くらい前に、もうすでにイラストと文章の仕事をされてたんですね。『ガロ』の頃からですか?

渡辺 そう。『ガロ』の頃から。

●渡辺さんは広島のご出身とうかがってますが。

渡辺 そうです。あなたも広島? 僕はさ、そういうイラストとか業界に入る学校に入るために来たんだよ。

スエイ 長髪?

渡辺 もちろん長髪ですよ。全員長髪。南伸坊さんも長髪。

●スエイさんはその頃は長髪じゃなかった?

スエイ ……ちょっと長髪。

渡辺 でも、スエイさんはさ、僕が会ったときは相当社会人に見えたよね。僕らが30歳になるくらいまでアングラな人って世の中に結構いたんだよ。なんか、ヒゲとサングラスとかでさ。で、画廊のオープニングとかで挨拶するときにさ、右側の後ろのほうから「異議ナシ」って言う人が必ずいてね。知らないだろ?

●知らないですね(笑)。なんですか、その「異議ナシ」というのは。

渡辺 アカ(左翼)の思想的なアレがあるんだと思うけど、なんでもかんでも「異議ナシ!」だったの。

スエイ アレ、みんな言ってたよね(笑)。映画観ても「異議ナシ」って。

渡辺 いつ頃、「異義ナシ」は絶滅したんだろうね。1970年代後半? 自動車ライターとかの専門業界は割と遅れてて、85年頃までは「異義ナシ」って言ってたけど。

●対して「異義がある」場合はナンというんですか? 「異義アリ」?

渡辺 いや「ナンセンス」。だから、当時は「異義ナシ」か「ナンセンス」しかなかった。僕も「異義ナシ」を師匠に付いてお稽古したことある。デジタル音源にするといいよねI-podに入れられるように。(笑)。

やっぱり、偉い人っていうのはパワーだよ。
力で動くの

●前後しますけど、スエイさんが「相当社会人に見えた」のは何故ですか?

渡辺 大人ですもん。

スエイ 『ガロ』はね、なんて言えばいいんだろ……非社会(笑)。

渡辺 そうそう、非社会(笑)。アングラ。ハズれてる。やっぱりさ、スエイさんの場合は岡山で苦労してるから。岡山で「これからは工業化社会だ」っていうのをさ、もう経済成長が終わってるようなときに思ったわけじゃん。

一同 爆笑

渡辺 そこが大事ですよ(笑)。これから情報化社会が始まろうとしてた時期に。だからね、物凄い最先端のことをやってる人が偉いわけじゃないんだよね。ズレてて大丈夫なんですよ。ズレてて大丈夫なんだけど、パワーがあるかどうか。やっぱり、偉い人っていうのはパワーだよ。力で動くの。『ガロ』にいた頃に、若い奴が色んな原稿持ってくるのよ。アレ見てて思ったけどさ、99パーセントやっぱりダメな人。パワーがない。そういう人は、ほとんど隠蔽されたまま終わるんですよ(笑)。1パーセントですよ、ちゃんとなるのは。例えば、花輪和一とか蛭子さんとかは1パーセントだけど、初めからもう突出してたもんね。

スエイ 原稿を売り込みに来る人には社会性ない人もいるでしょ?

渡辺 社会性ないよ。だって、「靴の紐がない」とかだもん(笑)。だから、原稿のことよりも「毎日風呂入ったほうがいい」とかさ、そんな話しかしなかったよ。それだったら、岡山から電車に乗って水島の工場で働いた人のほうが偉いんですよ。

一同 爆笑

 

「僕もそういう会社に入りたいな」
って思ってたよ

●あの頃の『ガロ』に、荒木経惟さんのモデルでスエイさんが出てるのを見たことがあって。女の人とカラんでる写真で。

スエイ 会社のOさん(女性)とカラんだやつだ。

渡辺 でも、白夜書房は凄い会社だよね(笑)。「僕もそういう会社に入りたいな」って思ってたよ。僕もね、荒木さんのヌード撮影で、現場に手伝いに行ったことがあるんだけど、面白かった。まず、荒木さんの撮影では風呂にお湯を入れておくんだよね。

スエイ 準備。

●それは何故ですか?

渡辺 入浴シーンを撮るため。

スエイ 「今から(入浴シーン)撮るぞ、ウォッ!」っていうときに、お湯がたまってないとダメなの。それと、毛を剃るのも風呂場だしね。当時は毛はダメだったから。

渡辺 毛はいけないですよね。世の中にマンコちゃんが見つかったら大変なことになる(笑)。毛はダメでも、スジはいいの?

スエイ スジもダメですよ。ただね、毛を剃るというのは、後で写真になったときに修正箇所が少なくて済むからなの。毛がなかったら、ちょっと丸入れて修正すればいいんだけど、毛があるところ辺まで丸で隠しちゃうから喜ばないでしょ、読者が。

渡辺 今は皆毛を出してるけどね。実はアレもいけないの?

スエイ ダメですよ、本当は。

でも、射精するとかよりも、
そこにいる人たちの方が
面白かったですよ

●その頃の渡辺さんはスエイさんの雑誌にどんな原稿を書かれてたんでしょうか。

渡辺 なんか「第一チンポ汁」とか「半勃ち」とか、そういう原稿。でも、スエイさんの雑誌で感心したのはね、なんと言っても「東京ラッキーホール」での雄弁。あれは俺、感動したね。風俗の記事っていっぱいあるけどさ、スエイさんの「東京ラッキーホール」は感動した。

●「東京ラッキーホール」は当時あった風俗ですよね。身長大のベニヤに描かれた女の人のイラストのアノ部分に穴が開いていて、そこにペニスを入れると向こうで見知らぬ誰かがしごいてくれる、という。

渡辺 やっぱり穴の向こうにいるのが、「もしかしたら男かもしれない」ってのがいいわけ?

スエイ そうそう。ドキドキ感がね。

渡辺 ドキドキ……噛まれるかもわかんないっていう。

●渡辺さんは風俗ルポみたいなこともやってたんですか?

渡辺 一時、スエイさんから仕事もらってやってたよ。でも、射精するとかよりも、そこにいる人たちの方が面白かったですよ。さっきも言ったけど、モデル撮影で面白いのがあってね。モデルが股を開いた写真をカメラマンが撮ってんのをスタジオで見てたの。スタジオでパッパッパッと撮ってるんだけど、モデルを連れてきたマネージャーがさ、撮影中にスポーツ新聞をずっと読んでてね。で、ただ読んでるだけかと思ったら、そのマネージャーがときどき、「それ、オナニーポーズじゃないですか?」って言うんだよ。

一同 爆笑

●「オナニーポーズ」にクレームを入れてる(笑)。

スエイ 新聞を読んでるフリをしながら、目だけはモデルを見てるんだよね(笑)。

渡辺 でも、カメラマンのほうもモデルに「オナニーポーズ」をさせたまま、色んな電動コケシとかを突っ込んで、そのまま撮影を続けてね(笑)。で、しばらくすると、マネージャーがまた「オナニーポーズじゃないですか?」って言うんだよ。それが面白かったね。

●女の子によって、「オナニー撮影はイヤだ」「SMはイヤだ」とか決まりがあるからですか?

渡辺 そう。「それ、オナニーポーズじゃないですか?」っていちいち言うのが面白かった(笑)。そういう仕事は本当に楽しかったですよ。お金払ってもいいですね。

僕は元々「このままいくとガンになります」
って言われてたからね

●ところで、渡辺さんの最新刊「キン・コン・ガン!」は面白いですね。凄い冷静というか。

渡辺 あぁ、そう? ありがとう。

スエイ 普通は自分が病気になってたらさ、中々こういう見え方できなくなっちゃうんじゃないかと思ったけど。客観的に見られないんじゃないか、と思ったね。

渡辺 僕は元々「このままいくとガンになります」って言われてたからね。僕に直接言うんだよ(笑)? だから、「いつかなるんだ」と思ってたし。かえって、ガンになってせいせいしたよ。

スエイ あ、そう……。

一同 爆笑

渡辺 胃潰瘍ってみんなよくなるけど、アレも実はガンらしいね。

●胃潰瘍がガンなんですか?

渡辺 うん。だから、胃潰瘍になるとすぐ胃を切っちゃうみたい。今はちゃんと告知するところもあるらしいけどね、「胃潰瘍ですけど、これはガンです」って。でも、切らなくても、そんなに大きくなかったら胃の中ガチャガチャやって、最後はホッチキスで止めちゃうの。で、一ヶ月くらい断食して、点滴だけで暮らせばいいんだけど。

スエイ じゃあ、「あなた胃潰瘍です」って言われたら危ないの?

渡辺 危ないよ、何回もなってたら。

スエイ でも、胃潰瘍って瞬間的になるらしいじゃない? すぐなっちゃうんでしょう。

渡辺 なる。怒ってばっかりいると、なるしね。

外国に取材に行くときでも、
ずっとメモを取ったことがない

●「キン・コン・ガン!」では、巻末のイラストが凄い印象的でしたが。

渡辺 入院してるときにね、水彩絵の具を持ってたからベッドで思い出して。あっでも、思い出して描いたっていうことでもないな。フランスに行って、飛行機から地方に行ったときに、見えた景色ですよ。それを描いたんだけど。


「キン・コン・ガン!」巻末のイラストより

スエイ でも、そうやって描けるのが凄いよね。僕だったら「あのときのアレを描け」って言われても描けないんだよね。記憶に残ってることだからかもしれないけどさ、そこが凄いよね。

●メモもいっさいしないんですか?

渡辺 外国に取材に行くときでも、ずっとメモを取ったことがない。そんなことをしても無駄。だから、あっちの人(クライアント)は「大丈夫ですか?」って、資料を集めてくれたりするんんだけど、全然大丈夫。

スエイ 意外とさ自分の記憶が、そのときの現実とちょっと違ったりするのが面白いんだよね。

渡辺 そうそう、面白い。だからアフリカに行ってもさ、今から思えばメモしておけば良かったと思ったりもするんだけど、そこではメモをするより見て回ってるほうが面白い。観光地行ったり、ピラミッドの中とかね。面白いですよ。土人? 土人って言っちゃ悪いけど、そのエジプト人の船に乗ったりしてるほうが面白い。映画より面白いですよ。

スエイ アウトサイダー・アートってのがあるじゃないですか。頭がヘンな人が描いた絵。前に、それを見に行ったことがあるんだけど、すごい絵があって。車に乗ってて、窓から見える風景を延々と描いてる人がいるんだけど、キュレイターの人に聞いたら、全部記憶で描いてるんだって。でも、物凄いリアルなんだよ。電信柱とか建物があって、それが何枚も何枚もあるわけ。しかも、一晩で描いてるっていう。

渡辺 それはわかる。実際と記憶とは違うのかもわからないけど、そういうのは面白いよね。

家にいたら飽きるね、やっぱり。
毎日家でご飯食べたりするの

●渡辺さんとスエイさんが、今後一緒に仕事をされる予定はないんですか?

スエイ 僕が現場にいたら一緒にやりたいけど、今はね。

渡辺 でもね、あんまり足下が悪いときに、外に出歩かないほうがいいと思ってる。

●でも、「キン・コン・ガン!」に「できるだけ用事を作って外に出たい」と書いてありましたけど。

渡辺 そうだよね。家にいたら飽きるね、やっぱり。毎日家でご飯食べたりするの。子供が夏休みだったからさ。子供は山崎パンでアルバイトしてるけどね。でも、まぁ、家にいるのもう飽きた(笑)。だから、どんどん出歩きたいね。

スエイ 呑みに行ったり、集会とか「アングラの会」もあるからね(笑)。

渡辺 そうだね。




 キン・コン・ガン!
ガンの告知を受けてぼくは初期化された

渡辺和博

二玄社/定価(本体1,000円+税)御購入は下記のどちらかから今すぐ!




第4回 ポーカー岩間さん

 スエイさんが編集局長を務める白夜書房には、数多くの編集者の方がいらっしゃいますが、中でもスエイさんに「アキラちゃん」とちゃん付けで呼ぶのが、ポーカー岩間さん。現在の所属は『パチスロ必勝ガイド』編集部とのことですがその真面目さと、酔ったときの華麗なパフォーマンスには他社員の誰もが嫉妬さえするほどだそうです。今回はテレコが回っているせいか、岩間さんが警戒、普段のパフォーマンスが出ず、最終的には人生相談みたいになってしまいましたが、貴重なお話満載です。


「スエイさんが、
自分のお金を道に捨ててた」っていう

●まず、岩間さんは白夜書房ではどういったお立場にいるんですか?

岩間 以前は『パチンコ必勝ガイド』編集部に所属していたんですが、昨年から同じ第2編集部の『パチスロ必勝ガイド』編集部に所属しています。

スエイ 岩間君はムードメーカーなんだよね(笑)。ムードメーカー岩間。

岩間 いやいや。でも、なんで僕なんですか? そのスエイ・コム……じゃなくてなんでしたっけ? スエイアキラ……なんでしたっけ?

スエイ バカにしてんの?

岩間 いや、そういうわけじゃないんですけど(笑)。でも、なんで僕なのかなぁ、って。

●岩間さんは白夜書房でもっとも過激らしいので(笑)。

岩間 僕は過激じゃないですよ、全然。過激なのはスエイさん(笑)。前にね、スエイさんの凄い話を聞いたことがあるんですよ。「スエイさんが、自分のお金を道に捨ててた」っていう。

一同 爆笑

岩間 前にスエイさんが「パチンコ玉は一個4円ぐらいで、それがパチンコ屋の床にパラパラ落ちてても誰も気にしないのに、小銭を大切に持ってるのはおかしい」とか言ってお金を捨ててたらしくて(笑)。唖然としました。

スエイ お金を持ってると、精神的に凄い不安定になるのよ。

岩間 それ聞いて唖然としたんですけど。あと、取締役編集局長にもなってる偉い人なのに「援助交際してた」とかわざわざ言わなくてもいいようなことを言うところが凄い(笑)。でも、ギャンブラーとしての美学は凄いカッコいいですよね。パチプロの故・田山幸憲さんもそうだったけど、お金にガツガツしてないというか。若くて、パチスロ打ってる子たちなんかは、結構お金にガツガツしてますけど……。

 

「いつか一緒にバカなことを
やってみたいなぁ」と思ってた(笑)

●岩間さんはギャンブルがとにかく好きだそうですが。

岩間 そうですね(笑)。白夜書房に入ったきっかけもパチンコが好きだからでした。入る前は全然関係ない営業の仕事をやってたんですけど、肌に合わなくて。夢の中で人に謝ってうなされてるのを、奥さんが隣で聞いてて「辞めたら」って(笑)。それで、もともとパチンコが好きだったし、編集の仕事にも憧れがあったんで、白夜書房に入れてもらいました。『パチンコ必勝ガイド』の熱狂的な読者だったわけじゃなかったけど、そういうフリをして(笑)。

●そこでスエイさんと出会った。

岩間 昔スエイさんがテレビに出てたのを観てたし、西原理恵子さんの漫画とかにも出てたから知ってたましたけど。スエイさんは凄いギャンブルをやってたから、そういうところに憧れてて「いつか一緒にバカなことをやってみたいなぁ」と思ってました(笑)。でも、バイトで下っ端だったから全然話しかけられなくて。だから、最初の頃は全然話をできなかったんですよ。

スエイ 岩間君は俺のことを「アキラちゃん」って呼んでくれたから凄い嬉しかったんだよ。

一同 爆笑

●会社の上司にちゃん付けで呼ぶのが凄い(笑)。

岩間 酔ってたんで(笑)。でも、僕は『写真時代』の頃のことを知らないから。やっぱりギャンブラーとしてのスエイさんの印象が強くて、そこが好きなんですよ。

 

高レートで打ってる様子を
見てみたい気持ちはあるけど、
スエイさんとは勝負できないな

●岩間さんとスエイさんで、一緒にギャンブルをやったりしたことはないんですか?

岩間 ないですね。前に一度、スエイさんから社内便で書類が届いて「なんだろう」と思って封筒を開けてみたら、韓国のカジノの案内だったことはありますけど(笑)。でも、スエイさんが一番ヤバかった頃のギャンブルを見てみたかったですね。スエイさんと勝負したいとは思わないですけど(笑)。「千何百万払え」って言われても払えないんで(笑)。

スエイ ギャンブルをやってさ、勝ち負けをウヤムヤにする人が結構いるんだよね。俺はそれは許せない。ウワァ、汚いって思うよね。普通のお金の貸し借りだったら別にいいけどさ。

岩間 いいんだ(笑)。

スエイ 普通の貸し借りなら、別に払ってもらわなくてもいいと思うけど、ギャンブルはすぐに清算しないとギャンブルそのものの意味がなくなっちゃう。だって、そうじゃないと、「なんで一生懸命ギャンブルをやるんだ」っていうことだから。たとえ、貧乏人であっても50万負けたら50万払うっていうのがギャンブル。

岩間 やっぱり、スエイさんとギャンブルしたくないっすね(笑)。恐い。

スエイ 何を言ってるの。当たり前じゃない、ギャンブルなんだから。

岩間 はい、すいません。


「岩間君は常に
酒を飲んでいたほうがいいよ」って

●岩間さんは普段は凄く大人しいのに、酔うとメチャクチャになるんですよね。

スエイ 岩間君はパンクっぽいんだよね。急に焼酎を一気飲みして倒れたりとか。カッコいいと思うけど(笑)。

岩間 そんなことないですよ(笑)。逆に、普段スエイさんに会うと、何故か僕を見るときにいつも半笑いなんですよ。「岩間君は常に酒を飲んでいたほうがいいよ」って。それってどうなんですかね。

スエイ いや、なんか暗そうだから。普段の岩間君はね、いつも暗い顔して歩いてるんだよね。道ですれ違っても、うつむき加減で上目使いで(笑)。

岩間 でも、道を歩いてるときは別に騒いだりしませんよ(笑)。

スエイ そう? 普通楽しく歩くじゃない。

一同 爆笑

●楽しく歩く(笑)。でも、その大人しい岩間さんがお酒を飲むと豹変して騒ぎ魔になるのは何故なんですか?

岩間 酔っぱらうと調子に乗っちゃうんですよ。「俺を見てくれ」という感じで。凄い注目を浴びたい(照)。でも、たいして面白いことはできないんですけどね。

スエイさんは
何も言わないですね(笑)

●雑誌編集という面で、上司のスエイさんは、岩間さんにどんなことを助言してくれるんでしょうか。

岩間 いや、スエイさんは何も言わないですね(笑)。ただ、これは僕個人的な意見ですけど、白夜書房の中でもスエイさんの意志を継いでるのはやっぱり『パチンコ必勝ガイド』だという感じはあるんですよ。

●それはなんで?

岩間 うーん……わかんないです(笑)。でも、まぁ「自分たちが率先して楽しもう」とかそういうところですかね。だから、『パチンコ必勝ガイド』の編集部は「ラブラブ! アキラ」なんですよ。

一同 爆笑

●なんなんですか、その「ラブラブ! アキラ」っていうのは。

岩間 いや、その……スエイさんのことをみんな好きだっていう。

スエイ 岩間君の言ってることよくわかんないね(笑)。でもね、編集ということで言うと、「こうしたほうがいい」と僕が思ってもさ、「まあ好きなようにやって」としか言いようがないわけ。

岩間 そう言われると難しいんですよね。

スエイ 全部自分が決める雑誌だったら細かいところまで言うけど、僕がやるわけじゃないんだもん。だから、「こういう風にしたほうが売れるんじゃないかな」って言う意見は言っても、それをゴリ押しは出来ないし、具体的に「何をやれ」とかは言えないですよ。やっぱりそれはクリエイティブなもんだから。マクドナルドの店長だったらさ、「これはこう作る」っていうマニュアルがあるんだから言えるけど。

みんなモヤモヤしてて、
「なんかやりたいなあ……」
というのは漠然とあるんですよ

●岩間さんが編集者として一番ツラいことはなんですか?

岩間 企画会議。ウマく説明できないんですよ。僕、言えない。どうしたら言えるようになりますか。

スエイ それは訓練だよ。僕も口が凄い下手だったからわかるんだけど、あらかじめ予行演習をしておくの。シミュレーション。僕は昔ね、人と話なんかしなくていいと思ってたの。チョコッとは話すよ? でも、そのチョコッと話したことで相手がわかんなきゃそれでいいって思ってたの。でも、うちの奥さんが「それじゃダメだ」って言うんですよ。「できるだけ相手にわかるように説明しないといけない」って言われたの。僕の考えに賛同してもらえるかどうかはともかくね。だから、僕も改めるようになったんだけどね。

岩間 そうか……。でも、僕は喋れるようになる自信ないっすね。

●逆に岩間さんの自信があることは?

岩間 ……なんですかね。

スエイ チンポコ?

一同 爆笑

岩間 でも、自信は特にないですね。

●でも、岩間さんは優しい印象がありますよね。人望がある。

スエイ 岩間君は自分の雑誌を作ればいいんじゃないの? 「俺は岩間だ!」っていう(笑)。『パチンコ岩間ガイド』ってのを作ればいいじゃない。

岩間 ああ。でも、フリーのライターさん、デザイナーさんとか仲の良い人とよく飲んだりするんですけど、みんなモヤモヤしてて、「なんかやりたいなあ……」というのは漠然とあるんですよ。

スエイ ムーブメントを起こせば? みんなが楽しくなるような。ただ、そういうときにさ、仲間内で完結しちゃったらそれでもうお終いになっちゃう。やっぱり広がりを作らないとね。それは売ることであり、話題になることであり、その人たちが自分では気付かなかったような能力を引き出すようなことだよね。

岩間 ……。

スエイ 怒ってんの(笑)?

岩間 いや(笑)。スエイさんはやっぱり凄い……言う通りです。でも、もし、僕が何かをやることによって、読者も作ってる側もみんながいい方向にいくのであれば、やったほうがいいですね。

スエイさんだって
僕達からすると凄い純粋な感じがしますよ

●岩間さんがスエイさんに聞いてみたいことはありますか?

岩間 スエイさんは美子さんのどこが好きなんですか?

一同 爆笑

スエイ 嘘をつかないのと、世渡りが下手なところ。嘘をつけないと世渡りはうまくいけないわけだから。世の中って全部嘘だから。

岩間 どっちが先に好きになったんですか?

スエイ そんなの向こうだよ(笑)。僕は常に受身だから。僕は「誰でもいい」と思ってるから。

岩間 でも、「美子さんで良かった」って思ってるんですよね?

スエイ うん、いい人を選んだと思うよ。ある種純粋なものがあるんだよね。そういう人と一緒にいるとさ、自分の不純さがわかるわけ。

岩間 でも、スエイさんだって僕達からすると凄い純粋な感じがしますよ。だから、「純粋同士だから続くのかなぁ」と思ってたんですけど。

スエイ いや、僕はなんとなく世渡りができるからね。そこがうちの奥さんと違うところなんだけど。


僕が作る雑誌は結構堅くて、
小市民的なんですよね

●では最後に、岩間さんの夢をお聞かせください。

岩間 夢? 本当はサーフショップかなんかやってノンビリ暮らしたいんですけど(笑)。でも、やっぱり売れる雑誌を作りたいですね。

スエイ どっちなの?

岩間 ときどき、「俺は編集として才能がそもそもないのかな」って思うんですよね。難しいっすね。

スエイ 「難しいっすね」ってオッサンみたいなこと言うね(笑)。でもね、「難しいっすね」で話が終わっちゃダメなの。「どっちでもいい」なんて言わないで、常に「自分はどっちなのか」っていうのを選ぶように習慣づけたほうがいい。「これは面白い」「これは面白くない」「この人は愛せる」「愛せない」とかね。そういうことは自分の中で考えておいたほうがいいよ。それ以外はいい加減でもいいから。

岩間 はい。でも、僕が作る雑誌は結構堅くて、小市民的なんですよね。

スエイ いや、だったら「小市民をまっとうすればいい」というようなことですよ。小市民は悪いことじゃないしね。「やっぱり小市民では岩間には叶わない」と人に思わせたら、それは凄いですよ(笑)。居直ってさ、「小市民だよ。文句あるか」「お前はまだ小市民のレベルにも達してないぞ」とか差別すればいいんじゃないの?

岩間 そういうことですか(笑)。

スエイ そういうことしか面白くないでしょ、今。日本って平和だしさ、いい加減にやろうと思えばいい加減に出来るし、人と調子よく話合わせていけば適当にやっていけるんだけど、そこが面白くないと思うんだよね。

岩間 やっぱりフリーダムですね、スエイさん。

スエイ 僕、フリーダム。

一同 爆笑

スエイ だって世の中みんなが縛られてんだから、縛られてる雑誌読んだってつまんないじゃん。みんな、雑誌を見てフリーダムになろうとしてるんだからね。雑誌の中がフリーダムじゃないとダメですよ。

岩間 今、すげーいい話されてる、俺。そうですよね。

スエイ 岩間君は「偉くなろうとしないところ」がいいんだから。そこは自信を持ったほうがいいと思いますよ。


ポーカー岩間さんが携わっている雑誌


 パチスロ必勝ガイド(白夜書房)
上のロゴをクリック。「ONLINEパチンコ必勝ガイド」より
コンテンツをお選びください!



第5回 田中健二郎さん

「絶対毎日スエイ日記」で度々登場する田中健二郎さん。自らを「さすらいのギャンブラー」と名乗り、その55年にも及ぶ、ギャンブル生活の中では常に命を賭けた勝負をしてきたという。現在は浅草で路上生活をおくっている健二郎さんにスエイさんとの出会い、ギャンブル哲学までを聞いてきました。

局長が東京(競馬場)に来たのが
4レース目のときだった(笑)

●最初に健二郎さんとスエイさんが知り合ったのは何がきっかけだったんですか?

健二郎 最初はね、『プロ麻雀』という雑誌で僕が連載してたのね、16年間。それを局長(スエイ)が読んだらしくて。そこからなんだけどね。局長と知り合ってから、白夜書房の麻雀と競馬の雑誌で書くようになったんだけど。

●それから一緒に打つようなこともあったんでしょうか?

健二郎 知り合って間もない頃に一緒に競馬場に行ったことがあるんだけど、ほら局長は大らかでしょ? だからね、待ち合わせしたのが東京(競馬場)なのに、局長は中山(競馬場)に行っちゃったの。しかも、中山のパドックに入ってから気付いたらしくて。普通は電車に乗っている間に気付くと思うんだけど(笑)。それで、局長が東京(競馬場)に着いたのが4レース目のときだった(笑)。まぁ、局長はそういう大らかな人ですよ。

局長もO型でしょ?
だから、人が良くて個性的なんだよ

健二郎 (唐突に)ところであなた何型?

●血液型ですか? A型ですけど。

健二郎 良かった。いい人だねあなた。僕ね、AB型が嫌いなの。AB型はもう全然ダメなわけ。100パーセントダメ。AB型は恐ろしいですよ。裏表とか二面性なんていうのは誰にでもあるわけね。だけど、AB型っていうのはそのAの二面性と、Bの二面性を合わせ持ってるから、要するに四面性になってるわけ。だから、恐ろしいの。僕もAB型の人には散々な目に合ってるの。あることないこと色々吹聴されたりね。

●何故、「A型はいい人」なんですか?

健二郎 常識人。だから、いい人。

●ちなみに健二郎さんの血液型は?

健二郎 A型。性格的にはAOだけどね。あと、O型は大らか。局長もO型でしょ? だから、人が良くて個性的なんだよ。スエイさんの悪口を言う人なんていないでしょ。

●で、B型は?

健二郎 わかんない。わかんない人が多いね。

●B型はわかんない(笑)。でも、それだけ健二郎さんが血液型にこだわるのは、やっぱり馬読みの影響でしょうか?

健二郎 そういうわけではない。もちろん、当然馬にも血液型があるし、魚にも、チンパンジーにもあるわけだけど、これはさすがにわからない。ただ、人間の血液型は僕にはわかるんです。

●で、その健二郎式観点で見るAB型っていうのが……。

健二郎 ダメな人間。

配当なんていうのは俗物でさ、
どうでもいいことだから

●スエイさんいわく、「健二郎さんはギャンブルの先生だ」とのことなんですけど。

健二郎 そう(照笑)? ちなみに僕のギャンブル歴は55年。16歳からですよ。日本橋で育ってね。世界初のプロ麻雀師が僕だから。昔は、日本プロ麻雀連盟の第1回プロ麻雀師試験の審査委員長をやったり、内弟子も何人かいて。「鬼才」……『プロマージャン』誌では、こう呼ばれていたわけね。


健二郎さんからいただいたサイン

 

●実際、健二郎さんはギャンブル系の著書も数多く出していらっしゃいますが、「世界初のプロ麻雀師」ということは、もう若いうちから「ギャンブル一筋でいく」ということを決めたんでしょうか。

健二郎 うん。ただ、僕がギャンブルをやるのはお金のためじゃないの。だって、「お金を増やそう」と思ったらギャンブルは絶対勝てないからね。これは局長にも理解してもらえないことだけど、例えば馬っていうのは神聖なもので、配当なんていうのは俗物でさ、どうでもいいことなわけ。

●でも、普通は配当のことが一番気になりますよね。

健二郎 うん。でも、それは素人で、趣味でギャンブルをやってる人。競馬っていうのはレースが終わった後に配当が決まるでしょう? そうなると、みんな配当が少なくてガッカリしてるんだけど、僕の場合は配当は全然関係ないわけね。その神聖な馬を見た、自分の結果がどうだったのか。そのほうが大事なの。

●普通は「お金を増やしたい」と思ってギャンブルを打ちますけど、そうじゃない。

健二郎 お金を増やしたいんだったら、仕事で一獲千金を狙ったほうがいい。だって、仕事は一獲千金を狙っても、財産とか命とかをなくすようなことはないでしょう。でも、勝負事……ギャンブルは誰がどうやろうと、1兆円張っても勝てないからね。できるとしたら、ネタを張った僕だけ。ネタというのは命のことだけど、これを賭けてやらないとギャンブルは勝てません。だから、本当にギャンブルで勝とうと思ったら、100倍全神経を集中させないといけないわけで、それをやるための生き方を僕は選んだの。

いきなり勝とうと思うと、
それは無理だと思う

--------ここでスエイさんが登場--------

スエイ いやぁ、どうも。田中さん、なんか小奇麗でサッパリしてますね。

健二郎 このジャケット100円で買ったの。拾った100円で。

●最近は御会いしてなかったんですか?

スエイ 半年ぶりくらい? 5月に雑誌『競馬王』で「100万円作らないといけない」という用事があってね。プレゼント賞金なんだけど、最初10万円しかなかったの。それじゃ読者が喜ばないから、これを10倍にしなくちゃいけないということで「僕が100万円にしてくる」と大見得切っちゃってね(苦笑)。で、田中さんに一緒に来てもらって競馬をやりに行ったんですよ。でも、ダメだったのね。やっぱりいきなり10倍は無理だね(苦笑)。2倍くらいならイケるかもしれないけど、10倍って設定したら無理。ある期間を持たないと。

健二郎 そう。いきなり勝とうと思うと、それは無理だと思う。

そういう20人とかのオッパイを
瞬時に見て数えるの

●ギャンブル以外で健二郎さんがハマっていることはありますか?

スエイ 「オッパイ大小」でしょ?

健二郎 いやぁ……(照)。

●なんなんですか、その「オッパイ大小」というのは?

スエイ 田中さんが街を歩いている女の人を見て、即座にオッパイが大きいか小さいかを判断するらしいんだよね。それを記憶してね、「現在まで大162、小138」とか数えてるらしいの(笑)。でも、そうやってるとさ、オッパイ「中」をどっちに入れるかが難しいですよね。

健二郎 最近は「中」も作ったんだけどね。でもね、半端な数じゃないですよ。大を1700人まで数えたからね。ということは見るオッパイは少なく見ても2000人以上なんだよね。

一同 爆笑

健二郎 それくらい暇っていうのは恐ろしいことだよ。どんなにツラいことかっていう。

スエイ 僕はその話を田中さんから聞いたときにね、「記憶力の訓練」だと思ったの。即座に判断していかないとギャンブルにならないからね。実際、田中さんは凄く記憶力いいもんね。

健二郎 だから、若い頃は「星を数える男」って言われてたの。普通、星なんて数えられないじゃない? でも、僕には出来たの。

スエイ でも、「オッパイ大小」もフワッとした服とかじゃわかんないでしょう。

健二郎 いや、わかる。今はもうブラジャーの種類もわかってるからね。今はね、ブラジャーの中に何かを入れて大きく見せるどころの騒ぎじゃない。オッパイを仮設したブラジャーがあるからね。あれもね、僕には絶対わかる。不自然だもんね。

一同 爆笑

健二郎 今の寄せてあげて谷間を作るなんて、全然魅力的じゃないよ。浅草はね、団体が多いけど、そういう20人とかのオッパイを瞬時に見て数えるの。あとは自転車乗ってる人とかね。動いてるし、すぐいなくなっちゃうから、パッと大か小かを見抜くわけ。

スエイ やっぱり大が多いと田中さんとしては喜びがあるの?

健二郎 うん。

その道を選んで野垂れ死んでしまうなら、
それはそれでしょうがない

●今、健二郎さんは路上生活をしていると聞いてますが。

健二郎 そう。フータロー(笑)。でも、ヤクザよりはマシだと思ってるわけ。僕は嫌いな人が5種類いてね。ヤクザ、タクシーの運転手、警官、パンパン、生意気な女……。日本人はみんなヤクザが好きなわけね。でも、バカのクセして肩で風を切って歩いてさ、犯罪しないと喰っていけないのに、なんであんなに威張れるのかが僕はわからない。タクシーの運転手とか警官、パンパンとか生意気な女も似たようなもん。嫌い。

●ギャンブルをやる人は、特にそういう好き嫌いがハッキリしてる人が多いような気がしますけど。

健二郎 うん。さっきも言ったけど、僕は若いときから「これで負けたら、野垂れ死にするかもしれない」と思うくらいの、命を賭けた勝負をしてきたからね。そういう中途半端な奴から威張られると腹が立つのね。

●でも、しつこいようですけど、その「命を賭ける」ギャンブルは、お金を多く得ようと思ってやってるわけじゃないんですよね。

健二郎 うん。ビートたけしがね、「女を口説いても、ベッドに入るとやらないことがある」って言ってたけど、その気持ちが僕にもよくわかるの。要するに、そこまでプロセスとか経緯が面白いだけなの。さっきも言ったように、馬なら自分が見た結果がどうだったのか、麻雀なら対戦相手に勝ったり負けたりするからいいんだよ。何事においてもそんなところがあると思うし、その道を選んで野垂れ死んでしまうなら、それはそれでしょうがない。だから、自分では路上生活でもいいわけね。ただ、局長がいつだかいいことが言ってくれたことがあって。「田中さんの人生は、まだ今は途中結果だ」って。プロはね、トータルで勝つっていうことだから途中だったら負けてても別にいいわけ。だから、僕のギャンブルは人生勝負だから、まだ結果がわからないのかもしれない。自分の人生が勝ったのか負けたのか……それは棺桶に入ったときに結果が出るのかもしれないね。




追記:取材時、田中健二郎さんがくれた封筒の中には
ギャンブルに対する思想と熟練の必勝術が綴られた
「ケンジロウ勝負学」の原稿が入っていた
(下の封筒をクリック)


ケンジロウ勝負学

勝負とは全財産か命を賭けること。その他は趣味である。
人生において負けられない勝負というのが
一度か二度必ずあるもの。



第6回 滝本淳助さん

 スエイさんが編集した雑誌でカメラマンとして活躍した滝本淳助さん。モデルとしても人気を博し、滝本さんの個性的な価値観を紹介した「タキモトの世界」(久住昌之氏との共著・太田出版)もいまだに古本屋で高値で取引きされるなど、根強いファンがいます。今回は「尊敬する人はスエイさん」という滝本さんにスエイさんとの出会い、現在の状況、トラウマからくるホモへの憎悪までの話をうかがいました。

あの頃僕、まだ学校行ってた頃ですよ。
大学8年通ってましたから(笑)

●滝本さん、その手どうしたんですか?

滝本 燃えた。

●燃えた(笑)。

滝本 ジッポのライターにさ、オイルを入れてて、そのオイルが手に付いてたらしくて、火をつけたら燃えた、手がブンッて。マズいでしょう、それは。

●マズいですよね。

滝本 マズいマズい。で、必死に消してね、15分くらい手を冷やしてさ。水膨れになってるんだけど、とりあえずガムテープを巻いてね。

スエイ 手当ての仕方が凄いね。

滝本 戦場って感じでしょう。治るね、多分。

●そんな滝本さんなんですけど、スエイさんと出会ったのはいつ頃の話ですか?

滝本 『ウィークエンドスーパー』ですね。1978年くらい。

スエイ 滝本君が東京キッドブラザースの専属カメラマンでニューヨークに行ってて、帰ってきた頃くらいだよね。

滝本 あの頃僕、まだ学校行ってた頃ですよ。大学8年通ってましたから(笑)。自分で言うのもアレなんだけど、結構得意だったのね。インタビューの顔写真を撮って、表でもう一枚撮るみたいな仕事が。内田祐也さんとか泉谷しげるさんとか、自分としてもウマく撮れたっていう自信があったから、それで気に入ってもらえたのかなぁ、と思ってるんだけど。

スエイ それからはインタビューとか座談会とかは滝本君にずっと撮ってもらったんですよ。『ウイークエンドスーパー』『映画少年』『写真時代』『写真時代jr.』。南(伸坊)さんの「笑う写真」とかもそうだったし、『パチンコ必勝ガイド』の創刊号くらいまでは撮ってもらってたんだよね。

まぁ、色んなことを
やらせてもらいましたよ

●滝本さんはカメラマンとしてもちろん優れた方ですけど、スエイさんの雑誌の中ではモデルとしても活躍されてましたよね。

スエイ うん。僕が一番覚えてるのは『映画少年』っていう雑誌で滝本君が「フンドシ少年」をやってたんだよね。僕の企画じゃなくて別に面白いとは思わなかったんだけど、「少年」ってことでまぁいいかな、と思って。で、滝本君がフンドシをつけて街を歩いたり、喫茶店でお茶を飲んだりしてね。それが偉いと思った(笑)。普通イヤじゃない、フンドシで街を歩くの。

一同 爆笑


フンドシで街を歩くことが大して面白いとは思わないが、
偉いと思った(スエイ)

 

スエイ あとは金良夫っていう謎の韓国人に滝本君が扮して、「ラインの法則」っていうのをあみ出したりとかね。

ナンなんですか、その「ラインの法則」っていうのは。

スエイ スカートの女の子のパンチラが見える位置っていうのは、女の子が開いた脚の角度の延長線の範囲内にあるという画期的な発見ですね(笑)。それを「ラインの法則」と名付けて、そのラインの範囲内にさりげなく入って、サッと写真を撮ってサッと立ち去るっていう。

一同 爆笑

滝本 まぁ、色んなことをやらせてもらいましたよ。「滝本淳助と写真漫画プロダクション」っていうのを作って見開きで物語を作ったりとか。

●そういう中で、名著「タキモトの世界」(久住昌之さんとの共著)も生まれたわけですよね。

スエイ そうだね。あれは面白かったよね(笑)。

だから、今はほとんどないですね、仕事は。
繋げることができなかったんですね

●最近は一緒に仕事をされる機会はほとんどないんですか?

スエイ ないね。何かあったら頼みたいんだけど、僕は現場にいないから。最近は仕事してないの?

滝本 ほとんどないですね。昨日ね、夜中にマイクロテープで1994年の留守番電話のテープが出てきたの。それを聞いてみたんだけど、物凄い忙しいね、この頃の俺。色んな出版社から電話が入ってるわけ。「滝本さんの御都合は……」とか「明日中にモノクロのプリントを……」とかね。その留守番電話のテープを聞きながらですね、なんで今2004年になりましてですね、仕事がついに1本も無くなっちゃったのかなぁ、と考えてたんだけど。才能がなかったのかもしれないけど(笑)、今は仕事がほとんどないですね。繋げることができなかったんですね。(唐突に)でも、今は焼肉ランチ。

●は?

滝本 昼は焼肉ランチ。御飯大盛、おかわり肉、カルビ。で、だいたい余っちゃう。で、夜はうな丼。2週間くらいそれを続けてます。

●食事へのこだわり方がまさに「タキモトの世界」ですね。

滝本 はい。でも、偏食だから口内炎になっちゃってクリーム塗ったり、薬を飲んだりしてますけどね。

スエイ でも、お金も使ってたらなくなっちゃうよ。

滝本 なくなっちゃうんですよね。なくなる、なくなる。

一同 爆笑

スエイさんが凄いのはね、
「面倒臭い女の人」っていうか
「大変な女の人」を相手に選ぶところですよ

●以前、滝本さんから「スエイさんは変態だ」と聞いたことがあるんですけど。

滝本 いや、変態っていうかね……変態じゃないですよ。ただね、スエイさんが凄いのはね、「面倒臭い女の人」っていうか「大変な女の人」を相手に選ぶところですよ。

●「大変な人」?

滝本 うん。物足りないんだろうね、普通のおとなしい女の人じゃ。でも、その面倒臭い女の人に振り回されるんじゃなくて、制圧していくっていうかさ、支配していくの(笑)。しかも、愛人なのにさ、ちゃんとみんなに紹介するんだよ。普通コソコソするじゃない、愛人だと。でも、ちゃんと恋愛関係を築いていくわけ。そこがカッコいいなぁ、と思ったんだよね。しかも、前の奥さんといきなり離婚して美子さんと結婚しちゃったでしょ。凄いです。あと、末井幸作さんを養子に入れたりとか。いきなり、30才くらいのときに20何才の息子が出来ちゃうっていうのがカッコいい。

スエイ 幸作は前の奥さんの弟だけど犯罪者だったからね。田舎に幸作のお兄さんがいて、「田舎では犯罪者がいる家には嫁がこない」っていうことで、名前を変えるために養子にしたわけ。結局、嫁さんは来なかったけど。それと、その頃の幸作は刑務所に入ってたから、身内でないと面会できなかったし。

滝本 だからね、僕は枕元にスエイさんの写真を貼って寝ています。「尊敬する人は誰ですか?」って聞かれたら、「白夜書房のスエイさん」って答えてますから。

●滝本さんはスエイさんの女装が好きなんですよね。

滝本 スエイさんの女装はさ、けっしてお笑いでもなく変態でもない。前にスエイさんに「女装のどこが気持ちいいの?」って聞いたら、「街でジロジロ見られたりすると気持ちいい」って言うわけ。ちょっと変態も入ってるのかな、と思うけど、これはやっぱり芸術ですよ。立派な芸術。僕はスエイさんからもらった女装の年賀状を何枚も大事に取ってありますけどね。スエイさんは今でも青春ですよ。僕も少し青春だけどね。

仕事をさせてもらってさ
「ここが俺の居場所だ」と思ったもん

●滝本さんは何か常識にとらわれることが好きじゃないんですね。

スエイ 滝本君、劇団にいたからね(笑)。劇団っていうのはフリーだからさ。

滝本 僕がいた頃の東京キッドブラザースはまだアングラ劇団でしたしね(笑)。

●「世の中の人が会社に就職するのがおかしい」と、滝本さんから聞いたことがあって。

滝本 そうね。就職はヤメたほうがいいですね。就職しても気持ちいい人もいるかもわかんないけど、俺はちょっと……。今から俺が就職するのは無理だけどさ。

●でも、滝本さんと話をしていると、白夜書房に対してだけは思い入れが強そうな印象を受けるんですけど。

滝本 そうですね。当時、白夜書房はセルフ出版っていう名前だったんだけど、仕事をさせてもらってさ「ここが俺の居場所だ」と思ったもん。学校というか、コミューンというか。劇団と構造が似てるな、と思って。スエイさんが座長みたいな。

●当時滝本さんが撮られた写真を見ると、みんな楽しそう。

滝本 あの頃はみんな友達みたいな感じでさ、凄い楽しかった。一度ね、創立10周年記念だかなんだか知らないけど、高田馬場の「平安閣」ってところで白夜書房の大きなパーティーがあってさ。銀行の人とか印刷所の人とかのさ、ネクタイ絞めたちゃんとした人がいっぱいいて、もちろん、荒木経惟さんがいて、木村恒久さんがいてね。その中で森下社長が挨拶した後でさ、編集局長のスエイさんがフリージャズのサックスを吹いたんですよね。編集局長が、会社の大宴会会場で挨拶しないでサックスを吹く……あれは感動しましたけどね。

スエイ あの頃は無闇に吹いてたんですよ(笑)。

滝本 オマンコの毛が写っちゃマズいから、毛を剃っちゃうとか。まぁ何しろカッコ良いんですよ、スエイさんと白夜書房は。うん。

そのホモがさ、俺のオチンチンをさ、
ギュッと握るんだよ

●スエイさんの「素敵なダイナマイトスキャンダル」の中の日記に、滝本さんが出てくるんですけど、やたらとホモを気にしてるんですよね。最近はホモは気になってないですか?


「素敵なダイナマイトスキャンダル」末井昭 p180より

滝本 ホモね。最近は気になってないけど、俺苦手なの、ホモが。前に千駄ヶ谷のアパートに住んでたときにホモから夜ばいされたことがあって……。隣に住んでた奴だったんだけど、ある日の晩窓から勝手に部屋に入ってきちゃって。そのホモがさ、俺のオチンチンをさ、握ってくるんだよ。「こういうのイヤでしょ? 嫌いでしょ?」とか言いながら。

一同 爆笑

滝本 それ以来ホモが恐くて恐くて。あ、ちなみにそれでも勃ちましたけどね。最近は全然ダメですけど。

だから、
天涯孤独の身なんですよ

●スエイさんに聞いてみたいことはありますか?

滝本 「スエイ式人生相談」に「友達が5~6人くらいしかいない」と書いてましたけど……。山ちゃんは友達ですか? 

スエイ 友達(笑)。

滝本 あぁ、友達。島本さんも友達?

スエイ そうだね。あと、南さん。

滝本 櫻木さんも友達?

スエイ うん。滝本君は友達いないの?

滝本 友達いない、俺。だから、それが羨ましい。僕の友達は高杉弾君と、大人計画っていう劇団の若い連中……阿部君とか、宮藤官九郎とかね。(また唐突に)滝本城、崩壊。

●滝本城、崩壊?

滝本 兄貴が1997年に死んで、親父も2001年に死んで、オフクロが2003年に死んで僕だけになっちゃったんです。僕が住んでる渋谷の素敵な団地もね、兄貴のダンボールとオフクロのダンボールがダーっと来ちゃって。前は勉強机のところに椅子を置いて、書きものとか色々してたんだけど、椅子はこっちのほうに置いちゃって、ダンボールがこっちに来ちゃって、もう勉強机が機能しない。だから、天涯孤独の身なんですよ。

●インターネットをやるっていうのはどうですか? 結構面白いですよ。

滝本 いや、どうもあの画面と文字が苦手でさ……ダメなの、俺。アレダメ、俺。でもね、なんだっけ? ヤフーだか、フーだかナンだか知らないけどさ、それで俺の名前を検索すると、100件くらい出てくるらしいんだよ。自分でそれを見たことないから、見てみたいと思ってる。だから、仕事もないし友達もいないしさ、それくらいですよ、今やりたいことと言えば(笑)。

●冬になると体調が悪くなるそうですが。

滝本 もう始まってるね。Tシャツ2枚重ね。靴下2枚重ね。毛糸の帽子2枚重ね。寒くなってきたから。12月・1月・2月はこれで乗り切ろうと思ってますよ。


追記:取材時に滝本さんが「スエイさんへのお土産」として
持ってきてくれた、過去の写真が面白かったので、
ここで紹介します(下のスエイさんの顔をクリック)


滝本淳助 WEB写真展

「スエイさん」
(C) Junsuke Takimoto


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